ジャガーEタイプを現代技術で再生 イーグル・ナンバー1 精神と構造は変えず 後編

公開 : 2022.03.06 07:06

車重は100kg前後は軽量に仕上がる

ナンバー1のステアリングは、現在のイーグルよりシャープらしい。「多くのオーナーは、もう少しゆっくりの反応を好みます。でも、お好みのクイックさを与えられます」。とブレースが説明する。

ブレーキはAPレーシング社製の4ポッドキャリパーと、巨大なベンチレーテッド・ドリルドディスクが選ばれている。「サーキットを熱心に走らない限り、ここまで大径の必要はないでしょう。1サイズ小さい方が乗りやすいはず」

イーグル・ナンバー1(ジャガーEタイプ/1995年/英国仕様)
イーグル・ナンバー1(ジャガーEタイプ/1995年/英国仕様)

ブレースが続ける。「お客様毎にニーズは異なります。最高で最大のものを望む方もいます。ですがクルマの目的を聞いて、ベストと思えるものを提案します。最も人気のあるスペックは、GTとスポーツですね」

カーボン製のエアスクープが装備されているが、リアブレーキの方が熱しやすいためだ。多くの改良が施されているものの、車重は増えていないという。

「通常、100kg前後は軽く仕上がります。マグネシウム製のサンプにデフ、ハブ、アルミニウム製のエンジンブロックなど、できることは少なくありません。バッテリーも小型のリチウムイオンにすれば、10kg軽くなるんです」

現在、イーグル社では約20名のスタッフが働いている。ここまで細心の注意が払われているということは、それなりの時間と費用を必要とする。同社の創業者、ヘンリー・ピアマン氏によれば、1台のイーグルを仕上げるのに4000時間以上が必要らしい。

一生に一度の買い物としての価値

「余計な心配や不安を取り除いた、イーグルの再生モデルを固定価格で提供する。われわれの仕事でユニークなポイントといえます」。とピアマン。

「一度クルマを分解し、見積もりをとったら驚く金額だった、ということもなくありません。1つの基準、1つの価格。イーグルEタイプなら、そんな落胆も不要です」

イーグル・ナンバー1(ジャガーEタイプ/1995年/英国仕様)
イーグル・ナンバー1(ジャガーEタイプ/1995年/英国仕様)

「イーグル・クラシックの場合、現在の英国価格は42万ポンド(約6510万円)から。ベースとなる、Eタイプの車両代も含まれます。通常、制作には約4500時間、18か月から24か月は必要です」

「自社開発したオプションのご提案もします。クルマはオーダー内容によって異なるので、最終的な価格はまちまち。イーグルGTの場合は、さらに2万500ポンド(約318万円)が追加されます。必要な税金も別です」

「最近、ジョンと同じ仕様に当たる、中古のイーグルを2台販売しましたが、価格は43万5000ポンド(約6742万円)と、54万ポンド(約8370万円)でした。ジョンがナンバー1を売ることはないと思いますが」

ちなみに、スパイダーGTとロードラッグGTの場合、ボディの工数が増え8000時間は要する。価格は50%増しだという。

少し呆れるような内容にも思えるが、彼らは真剣だ。上等なテーラードスーツのように、大抵のオーナーにとっては、一生に一度の買い物といえる。手間を掛け、望み通りに仕上げてもらう価値は間違いなくあるのだろう。

もうすぐ、50番目のイーグルEタイプが完成する。世界中に点在する幸福なオーナーは、50名に増えることになる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ポール・ハーディマン

    Paul Hardiman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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