シンプル・イズ・ベスト キア・スポーテージ 1.6 T-GDIへ試乗 逸材クロスオーバー

公開 : 2022.03.09 08:25

5代目に一新したSUV、スポーテージ。150psの1.6Lターボと6速MTの組み合わせを、英国編集部が評価しました。

先代になかったスタイリングの自己主張

韓国・キア社の経営陣は、自社の遺産や歴史にこだわることがお好みではないらしい。過去のモデルを振り返れば、理解できなくもないけれど。

現在のキアは、躍進を遂げつつある。純EVのクラスリーダーになり得る新モデル、EV6を作り上げるまでの実力を持つに至った。自動車産業全体で見ても、歴史に残りそうな飛躍といえる。

キア・スポーテージ 1.6 T-GDI(英国仕様)
キア・スポーテージ 1.6 T-GDI(英国仕様)

同社のマーケティング部門は、ハイテクでプレミアムなイメージを醸成しようと努めている。前時代の既存モデルは、あまり人目には触れさせたくないのだろう。

5代目へモデルチェンジしたキア・スポーテージだが、実は初代は、マツダ・ボンゴというワンボックスカーのシャシーをベースにしていた。そのイメージを引きずっている読者も、いらっしゃるかもしれない。

だが、2006年にアウディのデザイナーだったペーター・シュライヤー氏を招聘。モデルラインナップとブランドイメージの一新に取り組んできた。その変わり身ぶりは、クルマ好きなら振り返ってみるのも面白いと思う。

最新のクロスオーバー、スポーテージは、欧州の道路環境に合わせてチューニングされた、キア独自のプラットフォームで成り立っている。大胆なスタイリングは好みが分かれそうだが、先代になかった自己主張を備えていることは明らかだ。

オシャレな個性と見るか、少しやり過ぎと捉えるか。英国価格は、3万ポンド(約465万円)を切る。ライバルモデルを挙げるなら、マツダCX-5プジョー3008が該当する。

操作系の感触や反応に一貫したまとまり

キア最新のクロスオーバーには、幅広いパワートレインが用意された。電動支援の付かない内燃エンジンとしては、ターボで加給される1.6Lガソリンとディーゼルがある。これに、電圧48Vのマイルド・ハイブリッドを組むこともできる。

加えて、1.6Lガソリンに電気モーターを組み合わせた、システム総合229psのハイブリッドと、最上位に当たる264psのプラグイン・ハイブリッド(PHEV)も選べる。

キア・スポーテージ 1.6 T-GDI(英国仕様)
キア・スポーテージ 1.6 T-GDI(英国仕様)

駆動方式は基本が前輪駆動だが、ハイブリッドなら四輪駆動にもできる。トランスミッションは、トルクコンバーター式のATのほかに、デュアルクラッチATも用意された。6速MTは、ハイブリッドではない1.6Lエンジンでのみ選択できる。

先月、既にAUTOCARでは新しいスポーテージのハイブリッド版へ試乗している。今回は、エントリーグレードに当たる、前輪駆動の1.6Lガソリンターボに6速MTという組み合わせだ。

トリムグレードは真ん中に当たる「3」。ダンパーはアダプティブではない、通常のものだった。

5代目スポーテージとしてはベーシックな構成になるが、やはりシンプル・イズ・ベストかもしれない。運転した印象も非常に良かった。

ステアリングと3枚のペダル、シフトレバーの重み付けやフィーリング、反応に一貫したまとまりを感じる。ドライビング体験にそつがない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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