シンプル・イズ・ベスト キア・スポーテージ 1.6 T-GDIへ試乗 逸材クロスオーバー
公開 : 2022.03.09 08:25
フォード・フォーカスのように良い走り
ボディサイズは4代目から成長しているものの、回頭性も良い。その理由は、フロントに搭載されるエンジンが、1598ccの軽いユニットであることが大きいだろう。コーナリングが楽しいとまではいえないが、不満はまったく感じられない。
そのまとまりは、ステアリングの精度やニュートラル傾向の操縦特性、扱いやすいパワートレインなどにも及ぶ。完成度の高いフォード・フォーカスのように良い。
エンジン音が気持ちを高ぶらせたり、有り余るパワーやトルクが湧き出るわけではない。だが質感は磨かれており、とても快活に走ってくれる。
サスペンションのチューニングも素晴らしい。スプリングレートは、クロスオーバー・カテゴリーの中では硬めの部類に入るが、コシがあるしなやかさ、と表現できるレベル。
試乗車のホイールは、ノーマルサイズより1インチ大きい、18インチだった。平滑ではない郊外の路面を揺れで伝えていたものの、市街地での低速走行や滑らかな高速道路なら、穏やかな乗り心地を得られるようだ。
ハイブリッドで四輪駆動のスポーテージなら、車重も増える。印象は、これより劣るかもしれない。
訴求力の高いエントリーグレード
一方で、1.6Lエンジンは刺激に欠ける。小排気量のターボ・ユニットとして考えれば、レスポンスは悪くないし、約1500kgの車重に負けないパワーは引き出せる。設定は燃費重視。回転フィーリングは、ライバルと比較してザラついた印象がある。
インテリアは、全体的にはデザインに優れている。省コストを感じる硬質なプラスティック部品も散見されるが、それを超えて、メルセデス・ベンツのように2面が続いた大きなモニターは、とても見栄えがする。
後席側の空間も、膝まわりはほどほどながら、ゆとりがある。シートレイアウトはホンダHR-Vのように、目立った工夫がないようだ。
5代目スポーテージをまとめると、エントリーグレードの訴求力は間違いなく高い。車内空間に不足なく、走行マナーも褒められる。
運転を心から楽しめるわけではないが、操縦性のまとまりと、6速MTとの組み合わせにには充足感が高い。このクロスオーバー・カテゴリーの中では、新たな逸材といって良さそうだ。
キア・スポーテージ 1.6 T-GDI(英国仕様)のスペック
英国価格:3万945ポンド(約479万円)
全長:4515mm
全幅:1865mm
全高:1645mm
最高速度:181km/h
0-100km/h加速:9.9秒
燃費:14.7km/L
CO2排出量:154g/km
車両重量:1526kg
パワートレイン:直列4気筒1598ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:150ps/5500rpm
最大トルク:25.3kg-m/1500-4000rpm
ギアボックス:6速マニュアル