最新高級EV対決 前編 電動化時代の旗艦モデル ドイツの双璧 キャビンは未来派と合理派に二極化

公開 : 2022.02.19 13:45

航続距離の長い最先端モデル

まずはシンプルな、しかし重要な観察からはじめよう。この2台は、それぞれのやり方はあるにせよ、明らかにそうだとわかる進歩を遂げたEVなのだろうか。もし、今すぐEVに多額の投資をすることにシリアスなのだとしても、価格だけで見切るのは賢明な判断ではない。その長所や優先事項、好みやクセ、そして欠点も含めて、それらがどんなものであろうと、それでもやはりこの2台は、期待どおり最先端のEVには違いない。混迷を経験したドイツ自動車界の名門は、より強さを増してよみがえった。

どちらも、これまでのEVにはなかったものを持っている。iX xドライブ50は、ラグジュアリーなハイパフォーマンスSUVでありながら、アウディE−トロンSを置き去りにできる航続距離を誇る。しかも、ハンドリングはジャガーIペイスに肩を並べ、洗練性やキャビンの魅力的なしつらえはテスラモデルXなど寄せ付けない。万能で、包み込まれるようで、思いがけないほど個性あふれるクルマであり、止まっていても走っていても感じられる完璧さは、競合他車に対して革命的ともいえる大きな差をつけている。

サルーンとSUV、ではあるのだが、そのデザインは既存のルールに縛られないものだ。
サルーンとSUV、ではあるのだが、そのデザインは既存のルールに縛られないものだ。

EQS450S+はといえば、より型破りで、航続距離はさらに長く、別世界を見せてくれる。間違いなく、いっそう華やかなクルマだ。宇宙カプセルのようなルックスのサルーンで、インテリアはまるで未来像を提案したコンセプトカーからそのまま持ってきたよう。それも、比較的最近のショーで展示されていたものから。それこそ時代を遡れば、このままショーモデルとして出展できそうだ。

近未来を具現化したEQSのキャビン

EQSのインテリアは、明るく輝くパネルや光の演出、これまでみたことのないようなデジタル技術などに圧倒される。クラシックな高級サルーンらしさもある。乗ってしまえば、Sクラスと根本的な違いはなく、居住スペースも似たようなものだ。

しかし外観は、ウェッジシェイプがキツく、エアロダイナミクスを追求した、まったく異なるものだ。運転環境や二次的な操作系は、多くをSクラスと共用している。しかし、車載テクノロジーに関しては、ダッシュボードいっぱいに広がった、印象的なタッチ式ディスプレイのハイパースクリーンを含めて、持てる限りの技術が投入されている。

まるでコンセプトカーのようなEQSのインテリア。オプションのハイパースクリーンを装備すると、まるでSF映画に出てくるような眺めとなる。
まるでコンセプトカーのようなEQSのインテリア。オプションのハイパースクリーンを装備すると、まるでSF映画に出てくるような眺めとなる。

しかし、それは目に見える部分だけではない。『マイノリティ・リポート』のトム・クルーズは、ダッシュボード全面を占めるディスプレイやメニューコンソールをドラッグ操作して、ほしい情報を選んでサイズを思ったとおりに調整し、場所も形式も望んだとおりに表示してみせた。もしも生粋のハイテク好きで、トムのような操作をしたいと思っているなら、ようやくそれに近いものが現実になりつつある。

実際のところ、7995ポンド(約124万円)のオプションとなるハイパースクリーンに備わるのは、助手席側のタッチ式12インチディスプレイと、メルセデスのMBUXインフォテインメントシステムの最上位機種に用いられる18インチのセンターディスプレイ、そして大型表示のARヘッドアップディスプレイ。さらに、指紋スキャナーも含まれ、登録したドライバーを乗車時や設定呼び出し時に認識する。

デジタル計器盤の標準装備を踏まえて、メルセデスは小型スクリーンをいくつか用意し、まるで調整可能な超大型ディスプレイのように見せている。すべてが一枚の連続した画面のようだが、それはトリックだ。どれをとっても、機能もルックスもいいし、狙い通りの効果ももたらしている。テスラのように、車載ディスプレイでゲームをすることも可能だ。

もっとも、助手席用ディスプレイや巨大なヘッドアップディスプレイは、それがいかに鮮明で、ユーザーに歓迎されるとしても、同様のアイテムを装備したクルマは以前にもあった。その意味では、革新的と言えるものはない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター

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