最後のエンジン・サルーン ジャガーXF(最終回) 長期テスト 熟成された能力
公開 : 2022.03.05 09:45
フェイスリフトで得た優れたピヴィ・プロ
カーブの続く道で、ホットハッチを追い回すことも難しくない。特にRダイナミクス・サスペンションを装備していれば、より小さく軽く、タイトなモデルのように、機敏に駆け回れる。
意欲的に運転していると、落ち着きと柔軟性とのバランスにも心する。ステアリングのクイックさと重み付けがドライバーを勇気づけ、濡れた路面ではリアタイヤのトラクションを破ることも可能。とても自由度の高い性格付けがなされている。
運転を楽しみたい時は、しっかり応えてくれる。そうでない時は裏方に徹し、穏やかにボディを進める。幅広い能力を備えたパワートレインだ。
一方で、この大型ラグジュアリー・サルーンというセグメントでは、車載技術も重要。XFの登場時点では、ライバルに及んでいなかった。2020年にフェイスリフトされたXFに対し、ジャガーのインテリアデザイナーは次のように話していた。
「インテリアは、本当に次のレベルへ引き上げる必要がありました」。BMW 5シリーズの購入を考えているドライバーを、XFへ振り向かせるために。
ジャガー・ランドローバーのモデル群と同様に、最新のXFにはピヴィ・プロと呼ばれるインフォテインメント・システムが搭載されている。11.4インチのタッチモニターを備え、スマートフォンとの連携も無線で可能になった。
実際に押せるハードボタンは、そのかわり多くが姿を消した。これが、モダン・プレミアムなのだろう。
熟成された価格競争の高いモデル
ピヴィ・プロは非常に扱いやすく、評価の高いBMW iドライブにも匹敵すると思う。運転中でも、気をそらすことなく必要な操作をできるほど、直感的でもある。
エアコンなどには、従来的なハードボタンも残された。ただし、評価したいものの、少々カタチ優先的でもあるが。
タッチセンサー式のエアコンの操作パネルは、操作しやすいとまではいえない。パネル面から立ち上がってくるダイヤルは、見た目がオシャレとはいえ、慣れるともどかしく思えたことも事実だ。
とはいえ、フェイスリフト後のXFのインテリアで、数少ない気になるポイントでしかない。内装の仕立てや素材感は、ドイツ・ブランドに並ぶ水準を獲得している。価格に対する標準装備の内容も、自信を持って優れているといえる。
ジャガーXFは、現在販売されている大型ラグジュアリー・サルーンのなかで、熟成された価格競争の高いモデルに位置づけられる。フェイスリフトを経て、競争力は間違いなく高められている。
今後、ジャガーが純EVブランドへシフトしていくうえで、この品質は継承されるに違いない。内燃エンジンの載らないXFの後継モデルに、強い期待を抱かせてくれる。