自動車開発スピード どうすれば速くなる? 中国企業の凄まじい追い上げ、既存メーカーの対応は
公開 : 2022.02.22 18:05
自動車の買い替えペースが速い中国市場では、これまで以上に短い期間で新型車を開発することが求められます。
開発競争 中国市場のペースに対応できるか
新型車の開発スピードを上げるにはどうしたらいいのか。これは、自動車メーカーが何十年にもわたり、ライバルの先を行き、新しいトレンドに乗り遅れないために取り組んできた問題である。しかし、EV用バッテリー技術の進化がますます速くなり、特に中国では従来の市場にはない開発ペースを強いられるため、適切な製品を提供する必要性がより一層高まっている。
特に、EVとソフトウェアが重視される今の時代性を考えると、間違いを犯したときのペナルティはかつてないほど厳しい。品質コンサルタント会社のトリゴ(Trigo)で事業再生サービスのグローバル・ディレクターを務めるニール・エンドリー氏は、次のように述べている。
「自動車の製品ライフサイクルは非常に長く、新車を購入しても、その技術はかなり古くなっている可能性があります。テレビを買って家に置いたら、最初に目にした広告がそのテレビよりも新しいテレビでがっかりするようなものです。技術進歩のスピードが速いんです」
特に、中国人の自動車買い替えスピードは従来の自動車メーカーを悩ませている。日産自動車の内田誠社長は最近、中国ブランドのペースに言及し、この懸念を表明した。「彼らは市場投入スピードが速く、我々も将来的に学ぶ必要がある」と述べたが、それにはまったく異なる企業文化が必要であることを認めている。「日本企業として、そのようなことができるだろうか?」と。
中国特有の開発スピードを経験した経営者やエンジニアは、示唆に富んでいると同時に警戒心も持っていると言う。中国でグローバルブランドを率いた経験を持つある幹部は、匿名を条件にこう語った。「ペースが速いので、物事を非常に迅速に進めることができ、企業のプロセスで行き詰まることはありません。欧米のエンジニアが24か月かかると言ったのに対し、中国のエンジニアは6か月でできると信じていました」
1つのブランドが競合他社に追いつくためには、大きな変化が必要だという。彼らは複数の要素を順次ではなく、並行して進めることで、スピードアップを図ったのである。「その結果、彼らはより機敏に対応できるようになったのです。それは、部分的にはエネルギーと意欲によるものであり、うまくいかないこともあります」
各社で設計と製造を加速させるために用いられているのがシミュレーションであり、特に衝突試験、空気力学、燃費の分野で活用が進んでいる。中国企業の1つで、IT企業のバイドゥ(Baidu)と自動車大手のジーリー(Geely)が共同で設立したジドゥ(Jidu)は、2023年に発表予定の新しい自動運転車のソフトウェア開発を、ハードウェア開発から切り離そうとしている。バーチャル空間でシミュレーションを行い、その結果を現実のシャシーと組み合わせることで、「研究開発の効率化」を実現するのだ。