EV火災の恐怖 ホントに危険? 消火できない理由や出火原因、対策を考える

公開 : 2022.02.22 17:45

経験値が低い今、あらゆる場所に対策を

クリステンセン氏は、衝突事故などでバッテリーパックに穴が開くと発火することを実験で実証し、「EVのバッテリーケースがへこんでいたら、危険だと思わなければなりません」と注意を促す。バッテリーパックは、過熱や充電中に発火することが知られている。さらに心配なのは自然発火で、製造時に不良品のセルが1つでも混入すると火災になる可能性がある。「どんなに経験豊富で注意深いメーカーが、品質管理に細心の注意を払っていても、欠陥のあるバッテリーセルは存在する」という。

バッテリーの炎はガスバーナーのようなもので、通り道にあるものを素早く発火させることができる。そのため、クリステンセン氏は、クルマが並んで駐車されている地下駐車場やバス車庫などでEVの安全性を考慮するよう求めている。「ドイツでは、過去半年あまりの間に3つのバス車庫が炎上しました。トンネル、フェリー、駐車場、EVを運ぶ貨物船など、EVを見かける場所はすべて安全上のリスクと考え、適切な措置を講じる必要があります」

デンマーク・コペンハーゲン市の消防局が開発したEV火災対策用のコンテナ
デンマーク・コペンハーゲン市の消防局が開発したEV火災対策用のコンテナ

また、使用済みのリチウムイオンバッテリーで走るように改造されたクルマ(クラシックカーなど)についても懸念している。「中古のリチウムイオンバッテリーの安全性は誰にもわかりませんし、それを示す標準的な試験もまだ考案されていません。違法な解体工場で取り外され、再び市場に流通するバッテリーもあります。安全性はどうなのでしょうか?リチウムイオンバッテリーの安全性については、さまざまな研究が行われていますが、今はまだ、学習曲線が非常に急なため、全員で協力する必要があります」

万が一の時は?

デンマーク・コペンハーゲンの消防当局は、火災が発生したEVやそのおそれのあるEVを、トラックに搭載して封じ込める方法を開発した。EVを入れたコンテナを平台のトラックに載せて保管するというものだ。コンテナの床と側面にはノズルがあり、ポンプで水を注入することができる。満杯になったコンテナは安全な保管場所に運ばれ、危険性がなくなるまで、場合によっては数週間放置される。その後、抜いた水はろ過され、安全に廃棄できるよう処理される。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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