ターボ車の注意点 お手入れ方法は普通のクルマと同じ? 心配すべきこと、しなくていいこと

公開 : 2022.02.23 06:05

間違った改造も故障の原因に 設計意図から逸脱

リカルド・マルティネス=ボタスは、インペリアル・カレッジ・ロンドンの機械工学科の教授で、ターボ技術の世界的権威である。現在の技術では、ドライバーはただ乗って運転するだけでいいが、クルマが純正の状態から変更(改造)されると話は変わってくるという。

「エンジン制御システムと現代のエンジン設計がすべてを解決してくれるでしょう」と教授。「しかし、システムを変更すれば、それは即座に設計意図を変更することになり、装置に与えられたもともとの意図を逸脱する可能性があります。改造する場合は、非常に慎重にならざるを得ません」

ターボチャージャーは、排気ガスの流れる力を利用して働き、より多くの空気をエンジンに送り込む。
ターボチャージャーは、排気ガスの流れる力を利用して働き、より多くの空気をエンジンに送り込む。

「エンジンマッピングはそのエンジンのために開発されています。オイルの種類を変えたり、添加剤を入れたり、ECUを変えたりしても、そのマシンの信頼性は誰も保証してくれません。開発者はそうした変更をテストしていないからです」

ターボ車を改造する場合、専門家によるソフトウェアとハードウェアを適宜アップグレードすることが不可欠だ。

「専門知識を持たずに行うと、ブースターシステムの変更はマシンに極めて大きなダメージを与える可能性があります。エンジンのシリンダーは以前よりはるかに高い圧力にさらされ、ピストンリングが吹っ飛んでしまいます。専門的な知識を持ち、マッピングに問題がないことを確認した上で改造すれば、もちろんうまくいきます。しかし、それは難しい作業です」

「こういうことを上手にできる人も少なくありません。しかし、もし間違った人のところに行くと、間違ったタイプの改造が行われ、数年後にエンジンが破損してしまうかもしれません」

マルティネス=ボタス教授は、最新の電子安全装置の恩恵を受けていない古いクルマには、冒頭のアドバイスはおおむね有効であるとしている。

古いターボ車に共通する5つの「コツ」

マルティネス=ボタス教授は、ターボ搭載車に共通する5つの「コツ」について教えてくれた。これらは主に10年以上前のクルマや改造車に当てはまるものだ。

1. 走行前にエンジンをかけてオイルの温度を上げる。

「『絶対』です。年式が気になる場合や、改造している場合は、考慮するのが賢明でしょう」

2. すぐにエンジンを切らず、冷えるまで待つ。

年式の古いクルマと、改造が施されたターボ車では少しばかり注意する必要がある。
年式の古いクルマと、改造が施されたターボ車では少しばかり注意する必要がある。

「現在のエンジンでは、オイルシステムはすぐにオフにならず、ある程度の冷却が行われます。しかし、もしあなたのクルマに冷却システムがないのであれば、注意しなければなりません。ほとんどのクルマは大丈夫だと想いますが、やっておいて損はありませんよ」

3. 高いギアで過度にゆっくり走ると、エンジンに負担がかかるので避ける。

「その通りですね。全く同感です」

4. ノッキングの原因になるので、推奨値より低いオクタン価の燃料を使わないこと。

「現在のエンジンでは、そのような状態にも対応できるようになっていますが、古いエンジンでは少し難しいかもしれません。ターボの信頼性には影響しないと思いますが、持続的にノック現象が起きるとエンジンそのものに影響が出ます」

5. 特にコーナー立ち上がりなどで、ターボラグがあるクルマの場合はアクセルを踏み込まないようにする。望まないタイミングにパワーが出てしまうかもしれない。

「現在のエンジンは、特にディーゼルエンジンにおいて、コモンレール式噴射システムを採用しており、非常に速いレスポンスを実現しています。しかし、8年ほど前までは、ターボラグがかなりありました。急にブーストがかかるので、コーナーを曲がるときには注意が必要です」

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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