ジープ・コンパス 詳細データテスト 意外にいいボディコントロール 広い室内 ニーズに合えば魅力的

公開 : 2022.02.26 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

タイヤを見て驚いた。テスト車の装着銘柄はグッドイヤー・イーグルF1なのだ。もっとオフロード志向か、燃費重視のものを履いているかと予想していたのだが。

同じ4xeでも、オフロード向けグレードのトレイルホークには悪路向けオールシーズンタイヤが純正装着される。ところが、今回のSグレードではグッドイヤーのスポーツタイヤをチョイスしているのだ。

スポーツタイヤを履くわりに、ステアリングフィールは曖昧。しかし、グリップ限界は高く、ボディの上下動やロールは過剰ではなく節度がある。
スポーツタイヤを履くわりに、ステアリングフィールは曖昧。しかし、グリップ限界は高く、ボディの上下動やロールは過剰ではなく節度がある。    MAX EDLESTON

このクラスには、BMW X1セアトアテカをはじめとして、ダイナミクスに優れるライバルが存在するので、このセレクトは理解できる。また、このグッドイヤーのグリップ限界は比較的高い。とはいえ、それらに肩を並べるというまでには至らなかった。

主な原因はステアリングにある。市街地の速度域でも、フィールはやや不明瞭だ。オフロードタイヤなら、それも想定内なのだが。

精密さに欠けるのも、ある意味で想定内だ。とはいえ、高速域でもステアリングは軽く、フィードバックにグリップレベルを教えるインフォメーションはない。ゆったり流すぶんにはなんら支障はないが、飛ばしたときにコンフィデンスをもたらしてくれるクルマではない。

といっても、それも満更悪くはない。ジープといえば、ソフトで揺れながら走るもので、気の抜けたステアリングや柔らかいシートを備えていると予想しているだろう。だが、コンパス4xeのサスペンションはかなり硬めで、垂直方向のボディコントロールはかなりいい。それでいて、凹凸を吸収するしなやかさは十分にあり、バンピーなB級道路もドタバタせずに駆け抜ける。

ロールははっきりとあり、着座位置が高く横サポートが物足りないシートによって増幅されるような感覚もある。しかし、その動きは過剰ではない。この手のクルマとしては、思いがけないほど落ち着いている。

パワートレインのダイナミクスもまた、うまくしつけられている。エンジンが前輪、モーターが後輪をそれぞれ駆動するので、フロントは180ps/27.5kg-m、リアは60ps/25.4kg-mということになり、かなりフロント優勢のアレンジだ。それは、感覚にも表れている。安全かつ安定したバランスで、トラクションやトルクステアが問題になることはない。

前後の駆動系をセパレートしたからといって、バッテリーを使い切って四輪駆動が使えなくなってしまうようなことはない。バッテリーの蓄電量は常に3%ほどをリザーブしておく制御が入っているうえに、回生ブレーキによって電力が補充されるからだ。そのため、充電していなくても、いざというときには後輪の駆動力や、一般的なフルハイブリッドと同様の機能が利用できる。

当然というべきか、EVモードを選択すれば後輪駆動となる。この場合、4WDにはならない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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