シトロエン2CV + ルノー4 世界で愛されたフランスの大衆車 上級志向の2台 前編

公開 : 2022.03.12 07:05

ワゴンボディに水冷4気筒エンジン

そんな嗜好の変化へ沿うように、ルノーは独自のパッケージングを練った。実用性や経済性を損なうことなく、より上級で現代的な要素も取り入れることが目指された。

1961年10月、2CVのユーザー層へ働きかけるべく、ルノーのディーラーにキャトルが並んだ。ボディとシャシーが分かれたセパレート構造に、前輪駆動。サスペンションは、前後ともに独立懸架式を採用していた。

ルノー4L(1961〜1992年/英国仕様)
ルノー4L(1961〜1992年/英国仕様)

ボディは、空間効率に優れたワゴンタイプ。農場での利用にも理想的な、大きな荷室を備えていた。

キャトルのもう1つの強みが、747ccの水冷4気筒エンジン。2CVより上質に回り、ノイズも遥かに静かだった。フランス政府が敷設した真新しい高速道路にも、不満なく対応できた。自国を超えて、世界の人々が新しいルノーへ夢中になった。

キャトルの生産台数が2CVを超えた1963年、シトロエンはAZAM仕様を発表。それに対抗した。

シトロエン・アミ6用のハブキャップに、新しいフロントガラス・フレーム、丸いドアハンドル、クロームメッキ加工のヘッドライト・アクセントやワイパーアームを採用。上級に仕立てることで、イメージチェンジを図った。

見た目で最も特徴的なのが、前後バンパーに付けられたループ状のオーバーライダーだ。「わたしは、ベターなインテリアとプラスティック製のステアリングホイールが、ポイントだと思いますよ」。と、オーナーのソープが話す。

「ルノーと争うように、1963年には18psの425ccエンジンも導入されています」。AZAMは、よりモダンでクラス上のシトロエン・アミとのギャップを埋めることにもなった。

最も上流意識が強いベルギー仕様のAZAM6

最も上流意識を表す2CVが、アミ6用のフロアパンと602ccエンジンを流用した、ベルギー仕様のAZAM6だろう。ソープが続ける。「発売は1965年。ベルギーやオランダ(ネーデルラント)、スイスのシトロエンによる、コラボレーションです」

「スイス向けにベルギーで製造されましたが、オランダでも高い人気を誇りました。697台がドイツへ輸出されたほか、北欧にも渡っています。スウェーデンやノルウェーでも、まだ元気に走る姿を目にしますね」

シトロエン2CV AZAM6(1965〜1967年/欧州仕様)
シトロエン2CV AZAM6(1965〜1967年/欧州仕様)

「その後、ベルギーの工場は2CVを改良したディアーヌと、バンの生産へシフト。AZAM6の生産は1967年後半に終了しています」

そんなAZAM6だが、実物を見れば、上級という表現が過大だと思わざるを得ない。ステンレスやクロームメッキが輝いているものの、少し離れると、それ以外の2CVとほとんど見分けがつかない。おそらく、オーナーズクラブの人でも。

反面、実際にステアリングホイールを握ると違いは歴然。26psを発揮するエンジンが、ずっと運転しやすいクルマにしている。

俊足と呼ぶには、まだ及ばない。ダッシュボードから伸びるシフトレバーを前後に動かす4速MTはリモート感が強く、丁寧にシフトチェンジしなければ内部を傷めてしまう。だが、速度が増すほど全体が良くなっていく。

しなやかで、信じられないほど伸長するサスペンションが活きてくる。目を疑う速度でのコーナリングも、確かに可能だ。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・マクレマン

    Greg Macleman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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