世界最大級の自動車図書館が凄すぎた 個人所蔵の貴重なコレクションに圧倒

公開 : 2022.02.23 19:45

英国のある個人宅に招かれた筆者は、何万冊もの自動車関連書籍が保管されたアーカイブを目の当たりにしました。

世界有数の規模 個人宅の自動車図書館

英AUTOCAR編集部にE・ディーン・バトラーという読者からメールが届いた。彼は126年の歴史を持つ英国版『AUTOCAR』誌を創刊号からすべてコレクションしているというのだ。これが全刊揃ったものは世界に6セットしか残っていないとのこと。

筆者は、バトラー氏が126年分の『AUTOCAR』の重みで床が沈んだ、セミデタッチドハウスか何かに住んでいる姿を想像していた。しかし、実際は全く違っていた。我らがバトラー氏の自動車雑誌コレクションは弊誌AUTOCARだけにとどまらず、1万5千冊にも及ぶことが判明したのだ。

E・ディーン・バトラー氏のアーカイブ
E・ディーン・バトラー氏のアーカイブ    AUTOCAR

『Motor Sport』誌の全巻、ロシアの自動車雑誌、『Auto Motor Und Sport』誌などなど、世界でも有数の自動車雑誌コレクションである。これは是非とも見に行かなければならない。こうして、筆者の仕事人生の中で、最も楽しい1日が始まった。

ディーン・バトラー氏は、セミデタッチドハウスではなく、英ウェスト・ミッドランズ州の人里離れた場所にある、エリザベス様式の大きな屋敷に住んでいる。ペンシルベニア生まれのバトラー氏は、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)社に就職し、化学の学位を取ったが、マーケティングに向いていることに気付いた。数年後、彼は眼鏡の大手メーカー、レンズクラフターズ(LensCrafters)社を設立し、それを売却した後、英国に渡りビジョンエクスプレス(Vision Express)社を設立した。

「それ以来、ずっとここに滞在しています」と、彼は言う。

バトラー氏は、筆者が乗ってきたイエローの2021年型マスタング・マッハ1を褒めてくれた。そして、アーカイブに案内する前に、わずか25台しか製造されなかった1968年型シボレーカマロZ28のホモロゲーションスペシャルを見せてくれたのだ。

「わたしが若かった1960年代、クルマがどんな音を出していたのか、聴いてみてください」とバトラー氏。現在76歳の彼が16歳のときから所有しているMG TDより、ちょっと愉快な音を聴かせてくれる。

クルマのコレクションは、フラットヘッドのフォードV8を搭載したスリングショット・ドラッグスター、ダッジ・ラムV10、ジャガーDタイプのレプリカ、ビュイック・グランドナショナル(V6ターボ搭載車)など、まだまだある。別のガレージには、グラハム・ヒルが初めて乗ったIROC(International Race of Champions)のカマロが数台並んでいる。

アーカイブに案内してもらうと、筆者は誤解していたことに気付いた。バトラー氏は、雑誌だけでなく書籍も膨大なコレクションを揃えている。個人所有としては、世界でも有数の自動車図書館に違いない。

「フロリダのコリアー・コレクションの方が大きいと思います。でも、わたししか持っていないものもありますね」とバトラー氏は言う。筆者に素晴らしい1日になりつつある理由の1つは、彼がアイテムの希少性や価値を自慢しないことである。そこには、歴史的な作品に対する純粋な情熱がある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    コリン・グッドウィン

    Colin Goodwin

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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