キャデラック・カスティリアン・エステートワゴン 8.2L V8に5.9mのフルサイズ 後編
公開 : 2022.03.13 07:06
極めてレアなアメリカン・フルサイズワゴンの1台が、キャデラックに存在します。英国編集部が魅力に迫りました。
もくじ
ーエルビス・プレスリー氏らもオーナーだった
ーキャデラック水準で仕上げられた車内
ー完璧な快適性に浸れるシャシー
ーフルサイズ黄金期の最後を飾ったワゴン
ーキャデラック・カスティリアン・フリートウッド・エステートワゴン(1976年/北米仕様)のスペック
エルビス・プレスリー氏らもオーナーだった
呆れるほど巨大な、カスティリアン・フリートウッド・エステートワゴン。1976年式キャデラック・フリートウッドがベースだ。
俳優のサミー・デイビスJr氏やエルビス・プレスリー氏、ジョン・ウェイン氏といったそうそうたる人物が、オーナーとして名を連ねた。1950年代から1970年代にかけて作られた、過去のキャデラック・ステーションワゴンと同様に。
時代をさかのぼると、特注のワゴンボディはノースハリウッドのコーチクラフト社や、ミシガン州のアメリカン・サンルーフ・カンパニー社、シカゴのモロニー・コーチビルダー社など複数から提供されていた。
なかでも最も有名なのが、オハイオ州のヘス&アイゼンハルト社が手掛けたクルマ。1950年代に、ビューマスターという素晴らしいウッディワゴンを完成させている。1959年には、観光目的の豪華なタクシーも作られた。
さて、今回のカスティリアン・エステートワゴンは、インスブルック・ブルーのボディにアイボリー・レザーが組み合わされた1台。コロラド州デンバーのディーラーを通じて販売され、近年まで同じ街を走ってきた。
現在の走行距離は3万2000kmほど。キャデラック&ラサール・クラブショーのコンテストで、優勝を掴んだ過去も持つ、素晴らしい状態にある。オプションもふんだんに搭載され、現存ではベストかもしれない。
現在のオーナーはダニー・ドノヴァン氏。何年も掛けてロングルーフのキャデラックを探してきたが、なかなかお眼鏡に適うクルマを発見できなかったらしい。
キャデラック水準で仕上げられた車内
実物を前にすると、そのスケール感に息を呑む。テールに向けて絞られていくフォルムは、ジャガーXJ-Sをベースにしたシューティングブレーク、リンクス・イベンターにも遠くない。
当時のアメリカ製ステーションワゴンの多くには、上下で分割するテールゲートが与えられていたが、カスティリアンの場合は上ヒンジの1枚もの。広大な荷室へ、一発でアクセスできる。
車内にはエルビス・プレスリーも納得したであろう、フカフカのカーペットが敷かれている。荷室にも。トラディショナル・コーチワークス社の仕事は、キャデラック水準で仕上げられている。
加工されたCピラーと3枚目のサイドウインドウは、接合部分をステンレス製のトリムが覆う。テールゲート上部のウインドウ・ディフレクターは、オリジナルのスタイリングに調和している。
フロントグリル上部は、分厚いクロームメッキのトリムで飾られている。その頂点では、女神が風を切っている。
キャデラックのV8エンジンは、静かでパワフルでなければならない。だが、存在を主張したり、オーナーの自尊心を過度に高める必要はない。
大きなボンネットを開くと、黒く塗られたエンジンルームが姿を表す。黒いホースやパイプ、配線が雑然と張り巡らされている。それに半分隠れるように、1975年からのオプションだった燃料インジェクションを載せた、8.2L V8エンジンが見える。