ステランティス 全14ブランドから「個性的」なEV発売を約束 CEOが語るプラットフォーム戦略

公開 : 2022.03.02 18:05

ステランティスは、プラットフォームを共有しながらも「個性」を重視したEVを各ブランドで展開するとのこと。

開発効率を高めつつ、しっかり差別化

ステランティスのカルロス・タバレスCEOは、4つの車両プラットフォームと3つのソフトウェア・アーキテクチャーを利用することで、14のブランドそれぞれが完全に差別化されたEVを市場に投入することが「容易」になると述べている。

タバレスCEOは、ステランティスの戦略発表に先立って記者会見し、同社最大の強みはブランド間で「共通のエンジニアリング資産」を共有できることであり、それによって開発効率を競合他社に比べて30%高めることができると語った。

オペル/ヴォグゾールが開発中の新型電動SUVのレンダリング
オペル/ヴォグゾールが開発中の新型電動SUVのレンダリング    AUTOCAR

また、プラットフォーム開発において国際的なアプローチをとっており、「このプラットフォームはこの国でこのチームによって開発された、というプライドは持ちません。それは時代遅れだと考えています」としている。

ステランティスは2023年後半から「STLA」の名の下に、オペル・コルサなどの小型車用、プジョー508などの中型高級車用、「AWD高性能車とアメリカン・マッスルカー」などの大型車、そして商用車用の新しいEVプラットフォームファミリーを投入する。

このプラットフォーム展開と並行して、ステランティスはグループ全体で使用する3つのAI搭載ソフトウェア・プラットフォームの開発に取り組んでいる。「収益性」のある3400万台の自動車を販売し、2026年までに40億ユーロ(約5122億円)、2030年までに約200億ユーロ(約2兆5600億円)の追加収益を生み出すという。

14ブランドの共通性を高めるということは、差別化のために多額の投資を行う必要があるということだ。AUTOCARは、4つの車両プラットフォームと3つのソフトウェア・プラットフォームで差別化を達成できるかと尋ねると、タバレスCEOは次のように答えた。

「間違いなくできます。しかし、それを判断するのはあなたです。もし、クルマが似てきたら教えてください」

プラットフォームの整理 ダッジにも期待

さらに、車種間で共有される要素は「顧客には見えない部分」であり、各ブランドの理念や優先順位に従って「カスタマイズ」することが可能だと述べた。

「25年前、わたし達は2つのブランドが同じプラットフォームを共有できるかどうかを議論していました。プジョーのクルマとシトロエンのクルマが、スケールメリットのために同じプラットフォームを享受できるのかと。25年経った今、それは明白ですよね?」

プジョーの小型EV、e-208
プジョーの小型EV、e-208

また、ステランティスのラインナップに多様性がないとの批判は、エンジニアリングではなく、デザイン面から来るものであることを示唆した。

「もし問題があるとすれば、それはエンジニアリング資産を共有しているからではないと思います。そのブランドを預かるスタジオの想像力の欠如から来るものだと思います」

ステランティスは現在、eCMPプラットフォームを使用し、エントリーモデルのEVを多数販売している。中型のEMP2プラットフォームでは複数の電動中型車を、PSAグループとFCAの合併前に開発されたプラットフォーム(例えば、アルファ・ロメオのジョルジオや旧FCAブランドが使用していたSCCS)でもさまざまな車種を販売している。

こうしたプラットフォーム群の後継となるのが、STLAファミリーだ。つまり、プジョーe-208の後継車は、アルファ・ロメオやダッジ、マセラティなど、より大型でスポーツ性の高いEVと、その構成要素を共有することになるのだ。

タバレスCEOは、これらの専門性の高い製品がどのように差別化されるかを示すために、今年コンセプトモデルとして発表予定のダッジ初のEVを挙げた。

「ダッジで電動マッスルカーを作ることになりますが、これは想像できないことですよね。彼らが提案するものは、まさに衝撃的なものです。衝撃的なほど素晴らしいのです」

さらに、ダッジの開発陣は「想像もつかないような音を作り出している」とし、運転方法に応じて「よりうるさく、より力強く」なると述べた。加速力の高さが普遍的になりつつあるEVで、高性能モデルの魅力となりうる新たな可能性を示唆している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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