アルファ・ロメオ・ジュリア GTAmでアルプス越え スーパーカーを目指したサルーン 前編
公開 : 2022.03.12 09:45 更新 : 2022.03.12 22:02
真にGTAを名乗れる最後のモデル
生粋のホモロゲーション・マシンとは異なる。だが、自動車文化としての重要性を考えれば、金額にも納得できる。電動化時代が目前へ迫っている。われわれが想像するような存在として、ジュリアで最後に「GTA」を名乗るモデルだと考えて良い。
500kgの駆動用バッテリーを搭載したクルマが、軽量化を意味するアレジェリータ(Alleggerita)を冠することは似つかわしくない。少々野蛮で時代錯誤で、ドイツ勢に対するイタリアからの挑戦状。世界遺産級といって良い。
今回は、モントリオール・グリーンに染められた、ジュリア GTAmでバロッコを目指す。内燃エンジンの歴史を締めくくる前に、聖地巡礼といえる旅をすべきだと考えた。アウトバーンとアルプスを越えて。
イタリアへ戻ると、このクルマは広報車両としての任務が解かれる。シリアルナンバーは、320/500番。整備を受けて中古車市場へ放出されるという。
旅のプランは、北海を渡りドイツを南下し、オーストリアを経由してイタリアを目指すというもの。途中、有名なステルヴィオ峠とミラノを通過する。バロッコの自動車試験場がゴールだ。
ところが、ステルヴィオ峠はその日の午後から冬季閉鎖に入ることを、アルファ・ロメオ側も筆者も知らずにいた。予想外の出来事には慣れっこだが、これにはガッカリした。欧州随一のワインディングを楽しめないとは。
ジュリア GTAmは、税金の関係でスイスを通過できないという。アルプス山脈の中腹にある、ソンドリオという町へ立ち寄りたいのだが、平坦な谷沿いを走るしかないようだ。
812 スーパーファストに近い感覚
英国からオーストリアまでの道のりは、至って順調だった。特別なクルマなだけに、印象深いものでもあった。
特に、信じられないほどソフトな乗り心地と、路面の波打ちや白線に対する敏感さが心に刻まれた。アウトバーンでは、路面が多少濡れていると、車線変更時に僅かにブレる瞬間もあった。
筆者の経験では、ここまで繊細な感覚を備えている現行モデルは、ほかにフェラーリ812 スーパーファストくらい。さらにGTAmには、そのスーパー・グランドツアラーのサルーン版と表現しても良いような、類似性も備わっていた。
ステアリングは軽くクイックで、コーナー外側へ荷重を掛けていく、比較的大きなボディロールが生じる。それでいて、フロントがダブルウイッシュボーン式のサスペンションは、正確に進行方向を整えてくれる。
この812 スーパーファストと共通する柔らかいコーナリングスタイルは、当初は少し不安を感じさせる。しかし慣れてしまえば、クルマとドライバー、アスファルトとの、素晴らしい一体感を味わえる。
こんなドライビング体験を与えてくれる、別のラテン系スポーツカーを思い出した。崇高なアルピーヌA110だ。
鮮烈なボディカラーや独特のオーラも、モデナのモデルに近い。魅了されてしまう。
この続きは中編にて。