アルファ・ロメオ・ジュリア GTAmでアルプス越え スーパーカーを目指したサルーン 中編
公開 : 2022.03.12 09:46 更新 : 2022.03.12 22:02
崇高なドライバーズカー、ジュリア GTAm。英国編集部は壮大な冬のアルプス山脈で、その魅力に迫りました。
濡れた路面とは相性が悪いGTAm
アルファ・ロメオ・ジュリア GTAmでイタリア北部、バロッコの自動車試験場を目指す今回のロードトリップ。ドイツ北西部のアイフェルでは、洪水の痛ましい被害を目の当たりにした。
道路が破壊され、スーパーマーケットの駐車場を迂回するような、仮設路が敷かれた場所もあった。このような環境は、さすがにGTAmも得意ではない。
タイヤがミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2ということもあり、濡れた舗装と相性が良くない。4000rpmを超えてシフトアップすると、トラクションが失われる瞬間がある。
操舵感は繊細だが、ステアリングホイールにはフロントタイヤのグリップ状態が伝わってこない。リアタイヤも、あまり落ち着きがない。8速オートマティックで低いギアを選んでいると、ハーフスロットルでも気を使う。
ジュリア GTAmの濡れた路面で薄まる安定性は、サスペンションに原因がある。フェラーリ458 スペチアーレのシャシーを仕上げ、ジュリアの開発をリードしたフィリップ・クリエフ氏の考えと、ジョルジオ・プラットフォームの特性でもある。
BMW M3 コンペティションなら、違っていただろうと想像する。4ドアサルーンだとしても、四季を通じて得意だとは限らない。もっと溝の多いタイヤを履いていても、大きな違いはなかっただろう。
フェラーリ由来の2.9L V6ツインターボ
ドイツを南下しバイエルン州に入ると、乾燥したアウトバーンがオーストリアの国境まで伸びていた。COVID-19の影響で、自由に飛ばせるほどガラガラ。フェラーリ由来の2.9L V6ツインターボ・エンジンの出番だ。
ジュリア・クアドリフォリオでは510psを発揮するが、GTAmでは540psを絞り出す。チタン製アクラポビッチ・エグゾーストと、ピストン冷却用に追加されたオイルジェット、専用コンロッドに感謝したくなる。
料金を払わずに、240km/h以上で飛ばせる。ツーリングカー選手権マシンのようなボディキットが、盛大に風切り音を放つ。
まれに追越車線へ遅いクルマが侵入してくるが、アルミ製シフトパドルを弾く絶好の機会。興奮を誘うように、レブリミット付近まで吹け上がるエンジンを楽しめる。
GTAmのエグゾーストノートにも、惚れ惚れする。ターボユニット的にこもり気味だが、ダウンサイジング・ユニットより遥かにシャープだ。
フルスロットルを与えれば、息の長い咆哮に包まれる。シフトアップのたびに、爆竹のような破裂音が混ざる。類まれな音響体験だと思う。
3時間ほど謳歌して、ステルヴィオ峠の入口へ到着した。山脈のマジックアワーという、狙った通りのシチュエーションで撮影できそうだ。やはり、道は閉ざされていたが。
アルファ・ロメオから電話が入る。スイスでの徴税を避ける手段があるらしい。少し待てば別のワインディングで、GTAmの本性を解き放てるかもしれない。