アルファ・ロメオ・ジュリア GTAmでアルプス越え スーパーカーを目指したサルーン 中編
公開 : 2022.03.12 09:46 更新 : 2022.03.12 22:02
ザウバーが開発したボディキット
ジュリアGTAは、とても特別なクルマだ。ホットなアルファ・ロメオは、クルマ好きを惹き付ける不思議な引力を持っている。そして実際、想像を超えて素晴らしい。自社の110周年記念として、威信をかけて設計された傑作だ。
運転はすこぶる楽しい。かのレーシングドライバー、ヴァルター・ロール氏ですら関心を抱くほど。
加えて今回お借りしているモントリオール・グリーンの1台は、一層特別なGTAm。改良を意味する、モディフィカ(Modifica)の頭文字が付いている。
どちらもジュリア・クアドリフォリオより広いトレッドが与えられ、カーボンファイバー製のエアロキットで武装されている。フロントフェンダーも専用品になる。
フロントスプリッターやリアディフューザーに加え、高くそびえる調整式リアウイングも、GTAmだけの装備。40mm延長して、サーキット走行へ最適化させることもできる。
ボディは後端でタイトに絞られている。スーパーカー級に太い幅285のリアタイヤが、下半分で大胆にその姿をのぞかせている。なんと素晴らしい容姿のドライバーズカーなのだろう。
このボディキットは、ザウバー・モータースポーツが開発した。現在はアルファ・ロメオ・レーシングという名で活動しているコンストラクターだ。マクラーレンのF1マシン開発にも用いられた、風洞実験施設での結果を経てデザインされたという。
スーパーカーへ接近した4ドアサルーン
リアシートは、外から覗いても見えない。GTAmの場合、ロールケージと消火器が占拠しており、実際に乗り込んでもその姿はない。
実用面では大きな妥協といえ、防音材もかなりの量が省かれている。高速道路では、乗り心地はしなやかでも、車内はとても騒々しい。BMW M3が、メルセデス・ベンツSクラスのように静かに思えてしまう。
リアミラーに映る姿は、ポルシェ911 GT3 RSのように勇ましい。それでいて、4ドアセダンというボディが、一層特別感を高めている。フロントシートは、サベルト社製のカーボンシェル・バケット。初めからハーネスが付いている。
それ以外の内装は、基本的にジュリア・クアドリフォリオと同じ。居心地が良く快適だが、全体的に黒が基調。アルカンターラで仕立てられたダッシュボードと、シリアルナンバーが印されたステッカーが目立った違いだ。
アルファ・ロメオは実際に、スーパーカーを生み出したかったのだろう。だが、現実的に選べた唯一の手法が、既存モデルをベースに開発することだった。
ジュリア GTAmは、4ドアサルーンをベースにしながら、スーパーカーへ可能な限り近づけられている。魅力的ではない、はずがない。さらに興味深い点が、ミドシップのマセラティMC20へ通じる印象を得られることだ。
しばらく写真撮影をしていると、筆者へアルファ・ロメオから電話がかかってきた。スイスへ入れるという。理由は明らかではなかったが。
この続きは後編にて。