誰も知らないSUV 32選 前編 生まれる時期が早すぎた不運な名車・珍車

公開 : 2022.03.05 06:05

ビアジーニ・パッソ(1990年)

1990年から1993年にかけて、イタリアで約65台のパッソ(Passo)が各メーカーからの寄せ集めの部品で組み立てられた。初代フォルクスワーゲン・ゴルフ・カブリオレのボディにフルボディキットを装着し、フィアット・パンダのヘッドライトをつけ、ゴルフ・カントリーの四輪駆動システムで固めたものである。

その結果、乗用車とSUVの境界線が曖昧な、分類不能のレジャービークルが誕生したのである。かなりの台数が錆で消滅したため、2020年現在、希少な存在となっている(突出した価値はないが)。ここに紹介する個体は、フォルクスワーゲンのコレクションの一部である。

ビアジーニ・パッソ(1990年)
ビアジーニ・パッソ(1990年)

マツダ・ナバホ(1990年)

初代フォード・エクスプローラ・スポーツをベースに、グリルのデザインと前後のライトを変更したのがナバホ(Navajo)。マツダ初のオフローダーとして、ケンタッキー州ルイビルで生産された。

ナバホは短命であった。4ドアの設定はなく(フォードはエクスプローラーで4ドア仕様を独占していた)、通常SUVとは無縁のブランドから発売されたのである。1994年に販売が終了し、マツダは2001年モデルでトリビュート(フォードのバッジエンジニアリング車)を発表するまで、SUVから撤退していた。

マツダ・ナバホ(1990年)
マツダ・ナバホ(1990年)

オールズモビル・ブラバダ(1990年)

1990年に発売された初代オールズモビル・ブラバダ(Bravada)は、ベースとなったシボレーS-10ブレイザー/GMC S-15ジミーとほぼ同じ外観だった。スプリットグリルの採用でオールズモビルのラインナップと足並みを揃え、ゴールド・パッケージが設定されるなど細かい違いはあったが、タキシードを着たブレイザーとして見分けられるドライバーはほとんどいなかった。

初代ブラバダは1994年まで販売され、その翌年には2代目となったが、ここでも基本的なバッジエンジニアリングの枠を超えることはなかった。1990年代後半、米国ではプレミアムSUVの需要が高まり、2代目は初代よりも売れた。2001年に発売された3代目ブラバダは、2004年のオールズモビル社の閉鎖に伴い、最終型となった。

オールズモビル・ブラバダ(1990年)
オールズモビル・ブラバダ(1990年)

いすゞ・アミーゴ(1990年)

この奇妙な3ドアSUVは、欧州ではオペル/ヴォグゾールのフロンテラとして何となく記憶に残っているらしいが、米国ではアミーゴ(Amigo)の名で販売されていた。米国の自動車市場はよほどのことがない限り、小柄なSUVには愛着を示さないということを、商品企画担当者は改めて思い知っただろう(初めてではないが、最後でもない)。

4気筒エンジンとマニュアルのみのトランスミッション(当初)はこのクラスでもほとんど愛用されず、1994年に廃止された。

いすゞ・アミーゴ(1990年)
いすゞ・アミーゴ(1990年)

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

おすすめ記事

 

人気記事