誰も知らないSUV 32選 後編 生まれる時期が早すぎた不運な名車・珍車

公開 : 2022.03.05 06:06

GMCエンボイXUV(2004年)

エンボイXUV(Envoy XUV)は、それなりに売れたSUVをベースに、後部を樹脂パーツで覆ったピックアップ風の荷台に変更し、100kg近い電動格納式ルーフを装備したモデルである。この重いルーフは動力性能に悪影響を与え、直6とV8が用意されていたにもかかわらず、性能はあまり良くなかった。

GMの大物、ボブ・ルッツがデビュー時に廃止させようとしたようだが、叶わなかった。年間10万台の販売を見込んでいたものの、2年間でわずか1万3千台しか出荷されず、結局ルッツの思い通りになった。

GMCエンボイXUV(2004年)
GMCエンボイXUV(2004年)

イヴェコ・マッシフ(2007年)

2007年に一部の市場で発売されたイヴェコ・マッシフ(Massif)は、英国をルーツとするスペイン製オフローダーのイタリア版である(複雑)。ランドローバー・シリーズIIIをベースとしたサンタナ(ギタリストではなく自動車ブランド)のPS10に近い多国籍SUVだが、イタルデザインのジョルジェット・ジウジアーロの指導のもと、イヴェコ専用のフロントエンドを持ち、インテリアも独自の仕様となっている。

2ドア、4ドア(7人乗り)、2ドア(ピックアップ)の3タイプで展開。年間約4500台が生産され、その多くがイタリア政府の各支部で使用されることになった。2011年11月、マッシフを製造していたサンタナが破産を申請したことにより、生産が終了。現在、アルプス以外ではほとんど見られなくなっている。

イヴェコ・マッシフ(2007年)
イヴェコ・マッシフ(2007年)

ポンティアック・トレント(2005年)

かつて名声を誇ったポンティアックブランドは、今世紀に入るとGMの中で次第に影を潜めていく。アズテックのような眉唾物のモデルで打開を図ったが、控えめに言っても結果は散々だった。

トレント(Torrent)はアズテックの後継車で、シボレー・エクイノックスMk1の焼き直しのようなポンティアックらしい無難な仕上がりになっていた。エンジンは3.4L V6のみで、後に3.6Lに拡大された。

ポンティアック・トレント(2005年)
ポンティアック・トレント(2005年)

しかし、知名度の低さと印象の弱さが災いした。シボレーはエクイノックスを50万台近く販売したが、ポンティアックはトレントを10万台強販売するにとどまり、最終年の2009年にはわずか9638台しか売れなかった。

サーブ9-7X(2005年)

かつて素晴らしい自動車会社であったサーブは悲しい結末を迎える。末期の非常に奇妙なモデルである9-4Xは、サーブに対するGMの不始末を象徴するものであったと言える。

横行するバッジエンジニアリングの犠牲者になった9-7Xは、サーブとはほとんど関係がなく、シボレー・トレイルブレイザーやオールズモビル・ブラバダのような、どこにでもあるGMT360プラットフォームを採用している。ただ、それら兄弟車の中で最も高価なモデルであり、高級車市場で戦うべく装備を整えていた。

サーブ9-7X(2005年)
サーブ9-7X(2005年)

GMは少なくとも、サーブの特徴であるイグニッションを中央に配置するなど、ある程度の独自性を持たせようとした。しかし、それ以外の部分はGMの香りをすべて覆い隠すことはできなかった。オハイオ州で8万6000台が製造された後、モデルも製造工場も消滅。サーブにとって最初のSUVであり、最後のSUVである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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