誰も知らないSUV 32選 後編 生まれる時期が早すぎた不運な名車・珍車

公開 : 2022.03.05 06:06

クライスラー・アスペン(2006年)

近年のクライスラーで印象に残るモデルは少ないが、このアスペンもその1つ。ダッジ・デュランゴの兄弟車としてバッジエンジニアリングされたアスペン(Aspen)は、デュランゴの販売台数には全く及ばなかった。

デュランゴは、ソリッドビームのリアアクスルを持つラムの派生モデルである。そのため、アスペンはクライスラー初のトラックベースのSUVとなった。販売台数が伸び悩んだため、わずか2年のモデルライフを経て2009年に生産終了した。

クライスラー・アスペン(2006年)
クライスラー・アスペン(2006年)

アスペンとデュランゴには、経済性を高めるためにハイブリッド車も設定されたが、世界的な金融危機のさなかであったため、発売後まもなくコストの理由で廃止。両ブランド合わせて約800台が製造されている。

スズキXL7 Mk2(2006年)

初代はグランドエスクードとも呼ばれていたが、2代目はより大人っぽいSUVとなった。シボレー・エクイノックスの兄弟車で、GMとのプラットフォーム共有によって生み出された。エクイノックスとは細かい違いがあり、3列目のシートが狭いのが難点だが、エンジンはGMの3.6L V6を搭載している。

米国市場の低迷と、長期にわたる燃料価格の高騰の中で誕生したXL7は、わずか2年で生産中止となり、5万台ほどが販売された。スズキは2013年に米国市場から完全に撤退した。

スズキXL7 Mk2(2006年)
スズキXL7 Mk2(2006年)

キア・ボレゴ(2008年)

キアの最新モデルは、ますます尖ったラインナップになってきているが、ピーター・シュライヤーが同社のために初めて手がけた量産車のデザインは、決して傑作と呼べるものではなかった。一部の市場ではモハベと呼ばれたボレゴ(Borrego)は、旧式のボディオンフレーム構造、3列シート、V6およびV8エンジンを特徴としていた。

しかし、米国で発売された当時は金融危機の渦中にあり、キアの名前も今よりずっと確立されていなかった。また、乗り心地や燃費が悪いこともあって、わずか2年の間に約2万3千台を売り上げただけで販売中止となった。2011年には小型のソレントが間接的な後継として、2019年にはテルライドが直接的な後継として登場した。

キア・ボレゴ(2008年)
キア・ボレゴ(2008年)

サーブ9-4X(2011年)

GMは2000年代にキャデラックSRXという高級クロスオーバーを設計していた頃、サーブにも9-4Xとい名でこれを導入することにした。GMがその生き残りをかけて戦っていたこと、そしてその戦いでますます不利になっていくスウェーデンの子会社を余剰な存在として見なしていたことは、忘れてはいけない。

サーブ9-4Xは、SRXと同じメキシコのラインで製造されていた。しかし、2011年モデルとして発売された直後にサーブの社運が尽き、わずか814台が生産されただけで、ブランドとともに幕が引かれた。

サーブ9-4X(2011年)
サーブ9-4X(2011年)

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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