なぜ? 「クロス系」ノート/フィットが売れないワケ ヤリス・クロス独り勝ちの背景

公開 : 2022.03.04 05:45

「派生」で成功しているモデルも

以上のようにコンパクトSUVの売れ行きを見ると、ヤリス・クロスやヴェゼルのような専用ボディを使う車種が好調だ。

ノート・オーテッククロスオーバーやフィット・クロスターなど、既存のコンパクトカーをベースに開発されたタイプは、グレードの1つに位置付けられて売れ行きも伸び悩む。

スバルXV
スバルXV    スバル

専用ボディとSUV風のグレードでは、SUVらしさも異なるから販売格差が生じるのも当然に思えるが、例外もある。

スバルXVは、インプレッサ・スポーツの派生モデルだが、売れ行きは好調だ。インプレッサ・シリーズ全体の59%をXVが占める。

インプレッサ・スポーツは34%で、セダンのG4はわずか7%だ。

XVが派生モデルなのに成功した背景には、複数の理由がある。

筆頭は外観のカッコ良さと悪路走破力だ。

XVの最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)は200mmを確保して、外観も派生モデルながらSUVらしさが濃厚だ。

全車が4WDを搭載して悪路走破力も高い。さらに価格は割安で、1.6i-Lアイサイトは、実用装備を充実させて233万2000円に抑えた。

さらにスバル車は、低重心の水平対向エンジンと4WDに特徴があるから、SUVのイメージも強い。

フォレスターよりもコンパクトなSUVはXVのみで、ユーザーを集めるうえでも有利になった。

スバルはレガシィ・ツーリングワゴンをベースにしたアウトバックを古くから手掛け、派生モデルのSUVも定着していた。

このような好条件が重なり、XVは人気車になった。

その点で日産には、コンパクトなSUVにはキックスもあり、ホンダにもヴェゼルが用意される。そうなると需要を奪われてしまう。

ノート・オーテック・クロスオーバーやフィット・クロスターの売れ行きには、両社のSUVラインナップから価格設定、残価設定クレジットの残価率まで、国内販売のさまざまな事情が影響を与えている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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