ロシア/ウクライナ情勢 日本の自動車メーカーに与える影響は?

公開 : 2022.03.06 05:45  更新 : 2022.03.19 14:15

欧州メーカーにも影響が

欧州メーカーでも、ロシアのウクライナ軍事侵攻に関係する影響が生産面で出てきた。

フォルクスワーゲンBMWはそれぞれ、ウクライナからの部品供給に問題が生じたことで、最終組立て工場の稼働を一時停止すると発表した。

ウクライナの国旗
ウクライナの国旗    シャッターストック

各種報道によると、原因はドイツのケーブル(配線)メーカーにあるという。

近年の自動車には多数のECU(制御装置)が組み込まれており、その数は高級車の場合100近くに及ぶ。

これらECUやライト類など、クルマの中にはさまざまなケーブルが配線されている。

先端開発分野では、ボディの一部やボディペイントの一部にケーブルの機能を埋め込むなどの技術があるが、現状ではケーブルが電気とデータを送るクルマにとっての血管として重要な役割を果たしている。

ケーブルの製造工程ではコスト削減のため、一部の作業を人件費の安い国や地域でおこなう場合がある。

筆者は以前、東南アジアでタイの部品メーカーがケーブル製造の一部を、近隣のカンボジアでおこなっている様子を取材したことがある。

あくまでも予想だが、今回の事例ではポーランドなどでの主要部品工場から、一部の作業がウクライナでおこなわれていたのかもしれない。

もし、そうだとすると、部品メーカーとして早急に対策を打つにしても、コスト上昇は避けられないだろう。

世界戦略の見直し時期か?

話をロシアに戻そう。

トヨタが一時操業停止を決めた、サンクトペテルブルク工場はいま(2022年)から15年前の2007年に操業を開始した。

「ロシアのウクライナ軍事侵攻によって、カントリーリスクが顕在化した」と筆者
「ロシアのウクライナ軍事侵攻によって、カントリーリスクが顕在化した」と筆者    シャッターストック

その頃は、BRICs(ブリックス:ブラジル、ロシア、インド、中国など)と呼ばれる経済新興国での経済成長が目覚ましく、その象徴が自動車産業だった。

BRICsでの市場規模が大きくなる中で、各メーカーが現地生産に乗り出していった。

ロシアの場合、日産はロシア国営企業との連携での進出となったが、トヨタは独自工場の建設を決断した。

工場が稼働開始からしばらくして、筆者はトヨタ本社関係者から「ロシアの工場従業員の手が大きくて、組立工程で時間がかかる場合がある」として、カムリの一部設計を見直したという話を聞いたことがある。

こうした小さな「カイゼン」により、トヨタはロシアでの現地化を着実に進め、生産能力で年間10万台、また2021年実績で8万台を生産するまでの拠点に育て上げた。

だが、ロシアのウクライナ軍事侵攻によって、一時的な工場停止という事態に陥った。

カントリーリスクという言葉があるが、経済危機のみならず、今回のような大規模な軍事的な出来事も想定することが重要であることを、あらためて実感した。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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