ライバルほぼ不在の能力 BMW M240i xドライブ・クーペへ試乗 直6に四駆で373ps

公開 : 2022.03.17 08:25  更新 : 2022.04.12 11:52

鋭いコーナリングと長距離の快適性を両立

パワーバルジが付いたボンネットをコーナーの頂点へ向ければ、M240iはコーナリングでも初代M2に肉薄していることが見えてくる。リムの太いステアリングホイールは、フィードバックが薄いものの、正確性や反応はパーフェクト。

標準装備のアダプティブ・ダンパーによるビタリと見事な姿勢制御と相乗し、シャシーへ思い切り負荷を掛けられる。ちなみに、ダンパーにはコンフォートとスポーツのほかに、自動調整されるアダプティブ・モードも用意された。

BMW M240i xドライブ・クーペ(英国仕様)
BMW M240i xドライブ・クーペ(英国仕様)

フロントタイヤのグリップ力は高く、コーナリング姿勢はニュートラル。しかしドライバーの気分次第で、リアのラインを鋭く変化させることもできる。

アクセルペダルを踏み込めば、電子制御リミテッドスリップ・デフがリアタイヤへ掛かるトルクを調整しつつ、パワー・オーバーステア状態へ持ち込める。xドライブは徐々にフロントタイヤへもトルクを分配し、弾けるような脱出加速へも結びつく。

走りがいのあるルートでは、M240iほど高速で縫えつつ、オールドファッションな楽しみ方にも開放的なモデルは、このクラスでは思い浮かばない。だが、それだけではないのが最新型だ。

設定をコンフォート寄りへ切り替えれば、穏やかな移動にも浸れる。ダンパーをソフトにすることで、乗り心地は硬めながら、鋭い隆起などの衝撃はしっかり吸収してくれる。

英国の一般道でも、不快に感じるような揺れはほぼ皆無。ロードノイズなども抑え込まれている。長距離移動も快適にこなせるといえ、先代のM2より訴求力は高そうだ。

同等の実力を備えるライバルはほぼ不在

マイナス面は、と考えてみると、MTを選べないことが1つ。それでも、8速ATはキビキビと巧みに変速をこなす。

またブレーキは、自信を高めてくれるような、踏み始めの減速感がもう少し欲しいと感じた。ペダルのストロークも長い。踏み込むほど、不足のない制動力は引き出せるのだが。

BMW M240i xドライブ・クーペ(英国仕様)
BMW M240i xドライブ・クーペ(英国仕様)

この2点を踏まえても、BMW M240iのドライビング体験は素晴らしい。英国価格は4万5795ポンド(約709万円)からに設定され、価格価値という面でも非の打ち所はない。

確かに、純血統の先代M2と比べれば、生々しさや興奮度合いでは少し劣るかもしれない。とはいえ、肉薄したと表現できる違いでしかなく、現実世界では相当に速い。より多くのドライバーが惹かれるであろう、動的能力のバランスに仕上がっている。

穏やかな220iと同じくらい、快適に大人数名での移動ができる。それでいて、気分次第ではシリアスな走りにも没頭できる。スタイリングも悪くないし、インテリアには豪華さがあり、装備も充実している。車内の実用性に不満はないだろう。

これほどの実力を備えるライバルは、殆ど存在しないといっていい。唯一気になる存在といえば、追って登場する2代目M2だ。既にM240iとひと回り大きいM4との間には、さほど明確なブランクはない。その隙間へ、巧妙に送り込まれてくるのだろう。

BMW M240i xドライブ・クーペ(英国仕様)のスペック

英国価格:4万5795ポンド(約709万円)
全長:4537mm
全幅:1838mm
全高:1390mm
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:4.3秒
燃費:11.4-12.2km/L
CO2排出量:186-200g/km
車両重量:1690kg
パワートレイン:直列6気筒2998ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:373ps/5500-6500rpm
最大トルク:50.9kg-m/1900-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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