エンジンはDB5 ヴァンテージ仕様 アストン マーティンDB4 価値あるモディファイ 後編

公開 : 2022.03.26 07:06  更新 : 2022.08.08 07:13

アストン マーティンの技術者が所有していた、アイス・ブルーのDB4。個性豊かな1台を、英国編集部がご紹介します。

シリーズ1に加えられた多数の変更

タデック・マレク氏がオーナーだった、アストン マーティンDB4 シリーズ1。1961年2月に技術者のジョン・ワイアー氏が残したメモから、この170/Lのシャシーで、4.0Lエンジンのドライサンプ仕様がテストされたことが推測できる。

また、オーバードライブ付きのトランスミッションと、ド・ディオン式リア・サスペンション、シングルプレートとツインプレートのクラッチと、吊り下げ式ペダルも試されている。

アストン マーティンDB4 シリーズ1(タデック・マレク仕様/1959年)
アストン マーティンDB4 シリーズ1(タデック・マレク仕様/1959年)

しかし、右ハンドルへコンバージョンされた時期は不明。ラインの低いボンネットと、DB4 GT用ダッシュボードが組まれたタイミングもわからない。

ジョンの見積もりでは、一連のテストで想定された費用は3000ポンド。新車のDB4には、3800ポンドの価格が付けられていた頃だ。

ボディを観察すると、フロントグリルは初期型。そこへ、GT風のカバーがかけられたヘッドライトと、オーバーライダーのない前後バンパーが取り付けられている。

ワイヤーホイールは、標準で16インチだったが、15インチへサイズダウンしてある。ドアにはクロームメッキのウインドウフレームが与えられている。これは風切り音を抑えるため、DB4 シリーズ2以降に正規採用された変更だった。

Cで終わるナンバーは、1965年の登録。タデックが4カムV8エンジンの設計に関わっていた時期だ。そして、彼がオーナーになった。

エンジンはDB5 ヴァンテージ仕様

自宅のワークショップで、タデックは手に入れたDB4を理想的な仕様へ整えるべく、7か月を費やしたらしい。その筆頭といえるのが、DB5 ヴァンテージ仕様のエンジン。カムや圧縮比、オイルクーラーなどが通常とは異なる。

トランスミッションはZF社製の5速マニュアル。リア・アクスルもDB5用のものが組まれている。

アストン マーティンDB4 シリーズ1(タデック・マレク仕様/1959年)
アストン マーティンDB4 シリーズ1(タデック・マレク仕様/1959年)

このDB4のベースは初期型のシリーズ1で、最も軽い。英国では当時最速といえ、GTザガートにも勝った。0-160km/h加速を13.7秒でこなす能力を備えていた。

エアインテークが後期型より薄いボンネットは、リアヒンジ。クロコダイル・スタイルで持ち上げると、誇り高い造形美の直列6気筒エンジンが姿を現す。

アルミニウム製のブロックの横に、ウェーバー・キャブレターが3基、整然と並ぶ。ヘッドの峰が、高速で回転する2本のカムシャフトを想像させる。4.0Lという排気量が生み出す、不足ないパワーを表現するようだ。

ドアを開くと、1965年以前に採用されていた、ブラック・レザーの内装が残っている。パワーウインドウと、手動で硬さを調整できるセレクタライド・ダンパーは、公式にはDB5から採用された。

灰皿はDB6用に見える。平坦なナルディ風ウッドリムのステアリングホイールは、オリジナルのようにマッチしている。リアのクォーターガラスは、電動で開閉できる。ロールス・ロイスがコーニッシュ・クーペでも採用した装備だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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