BMW iX 詳細データテスト 至高の快適性 有り余るポテンシャル 好き嫌い分かれそうなルックス
公開 : 2022.03.12 20:25 更新 : 2022.03.13 02:16
意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆
フルサイズSUVの高級EVは、2015年にテスラがモデルXを投入して以来、各社こぞって導入するカテゴリーとなった。しかし、BMW iXほど大胆な構造と多くの要素が盛り込まれた例はほとんどない。
構造的な基本要素は、新開発のEV専用プラットフォーム。これは今後、BMWグループのトップレベルのモデルに使われる予定のコンポーネンツだ。ベースとなるのはアルミスペースフレームで、随所に軽量なカーボンFRPのパネルが組み込まれた。フレームレスのドアや、サイドに回り込んだテールゲートを開くと、カーボン素材の織り目が確認できる。
BMWがスペースフレームと言っているのは、一般的なプレス材や鋳造材ではなく、アルミ押し出し材がほとんどの軽量なアンダーボディ構造であることに言及するためだ。
巨大なレーシングプロトタイプなどでは、チューブラーフレームのほうがおなじみだと思うが、iXのフレームシャシーはそれらと異なる。2003年のロールス・ロイス・ファントムや、さらに遡って1999年のBMW Z8などで謳われたほうのスペースフレームだ。
iXの場合、この構造スタイルにより、ほかの工法より軽量・高剛性に仕立てられた。とはいえ、それとは別の理由によって、軽いとは言えないクルマになってしまった。全長は5mに迫り、全高は1.7m目前という巨体で、床下には駆動用のリチウムイオンバッテリーが敷きつめられている。総容量は、エントリーグレードのxドライブ40が77kWh、上位グレードのxドライブ50とM60が111kWh。さらには、全車とも2モーター式4WDだ。
そのため、もっとも軽量な仕様でも2365kgに達する。テスト車の実測値は2593kgで、xドライブ50 Mスポーツのカタログ値より83kg重いが、これは英国仕様に標準装備されるエアサスペンションとアクティブ四輪操舵システムによるところが大きそうだ。
2017年に計測したベントレー・ベンテイガのディーゼルモデルに比べれば、ちょうど50kg軽い。とはいえ、足を轢かれて無事で済むような重さではない。
ところで、2022年現在、10万ポンド(約1550万円)級の高級EVになにを求めるだろうか。スーパーカー並みのパワーというなら、618psのM60がある。0-100km/h加速の公称タイムは3.8秒だ。これまでの水準を塗り替えるような航続距離がほしいというなら、xドライブ50がおすすめだ。WLTPサイクルのテストデータは、最大629kmに達する。
4WDによる全天候型の走行性能や、SUVならではの室内の広さと万能性は、いずれのグレードにも備わっている。いずれをとっても、iXは期待に応えてくれるはずだ。
ただし、エレガントさや控えめなデザインを最優先するなら、話は違ってくる。このクルマの登場以来、そのスタイリングは賛否両論を巻き起こしてきた。もっとも、このロードテストはあくまで客観的指標に基づく検証を旨とするので、主観的な解釈についてはこれ以上触れないことにしておこう。
ただし、このクルマにきわめて根本的なレベルで買いたいと思えないものを感じているという読者は、きっとお気づきだろう。そう思っているのは自分だけではない、ということに。