跳ね馬の輝きは霞まない フェラーリ296 GTBへ試乗 830psのミドシップPHEV 前編
公開 : 2022.03.10 08:25 更新 : 2022.03.10 21:42
F8トリブートより50mm短いホイールベース
V8からV6へエンジンをコンパクトにすることで、増えた重量の一部は相殺しているが、結果として車重はフェラーリF8トリブートより35kg重いという。乾燥重量で1470kg。走れる状態での車重は、1600kgほどになるようだ。
車両中央、ガラスカバーの内側に搭載されたメカニズムは、驚くほどコンパクトで背が低い。重心位置も、さぞ低いことだろう。
ホイールベースは2600mmということで、F8トリブートより50mm短い。ドライバーの着座位置は、フロントタイヤ側で14mm近い。
このショート・ホイールベースには、フェラーリの技術者も悩んだらしい。機敏さや安定性など、操縦性に影響を与える重要な部分だからだ。
さらに、パワーステアリングは油圧アシストではなく、フェラーリとしては初となる電動アシスト。ブレーキも、ペダルからの電気信号で制御される、バイワイヤーとなった。いずれも、チューニング次第では人工的な感触が強くなってしまう。
デ・シモーネの開発チームは、2010年までは3名の技術者で構成されていたという。しかし、複雑さを増すモデル開発へ対応するように、現在は15名へ増えている。そのチームワークは、見事だったといえる。
一般的な前ヒンジのドアを開くと、ドライバーの正面にモニターが埋められた、最新のインテリアが迎えてくれた。デザインはとてもクリーンで、ランボルギーニ・ウラカン・エボほど派手ではない。だが、マセラティMC20よりは華やかだ。
EVモードで最大で25km走行可能
人間工学的には、良い部分ともう少しな部分が入り交じる。とはいえ、不自然なドライビングポジションを強いられるイタリアン・スーパーカーの時代は、とっくに過ぎ去っているが。
ステアリングホイールがもう少しドライバー側へ近づけば、とも感じるものの、常時気になるほどではない。ステアリングホイールは、ほぼ円形で握りやすい。大きなシフトパドルは、ステアリングコラム側に固定されている。
コラムはシンプルで、横に伸びるレバーは1本もない。パドルへのリーチは良い。
そのかわり、ステアリングホイールは少々煩雑。ライトにワイパー、ウインカーのスイッチが集約されている。インフォテインメント・システム用のタッチセンサー類も。
フェラーリおなじみの、ドライブモードを選択するマネッティーノ・ダイヤルも、もちろんステアリングホイール上。ハイブリッド・システム用のタッチセンサーも一緒だ。
296 GTBはPHEVだから、パワートレインには数種のモードが用意された。EVモードを選ぶと駆動用モーターとバッテリーだけで走行でき、距離は最大で25km。欧州の都市部で普及が進む、ゼロエミッション・ゾーンを走ることもできる。
日常的に選ぶであろう選択肢は、バランスの良いハイブリッド・モード。パフォーマンス・モードは、駆動用バッテリーの残量を維持しつつ、可能な限り最大の動力性能を引き出す。クオリファイ・モードは、充電量を気にせず短時間にすべてを発揮し尽くす。
この続きは後編にて。