跳ね馬の輝きは霞まない フェラーリ296 GTBへ試乗 830psのミドシップPHEV 後編

公開 : 2022.03.10 08:26

ル・マン・マシン風の専用塗装も

サーキット用に準備されていた296 GTBには、アセット・フィオラノ・パッケージが搭載されていた。サスペンションが専用になり、軽量化され、空力特性が高められ、英国では2万5920ポンド(約401万円)が増える。

注目すべきアイテムが、マルチマティックと呼ばれるダンパー。GTレーシングカーの技術を応用した、アダプティブではないパッシブ・ダンパーだ。高速域でダウンフォースが10kg増える、フロントバンパー・エクステンションは見た目の差別化にもなる。

フェラーリ296 GTB アセット・フィオラノ・パッケージ(欧州仕様)
フェラーリ296 GTB アセット・フィオラノ・パッケージ(欧州仕様)

このオプションでは、ドアパネルはアウターパネルもインナー側も、カーボンファイバー製になる。ガラス製のエンジンカバーは、軽量なレキサン樹脂製に置き換えられる。これら合計で、15kgのダイエットにつながっているという。

加えて、タイヤはミシュランのパイロットスポーツ4Sから、ドライグリップに長けたパイロットスポーツ・カップ2Rへグレードアップされる。ちなみにサイズは、フロントが245/35Zで、リアが305/35Zだった。

一度温度が上昇すると、そう簡単にグリップを失わせることは難しい。そのかわり、すぐに減ってしまうが、296 GTBのオーナーなら気にしないのだろう。

アセット・フィオラノ・パッケージを選択した場合のみ指定できる、ル・マン・マシンを彷彿とするような専用塗装も用意された。ほかにも、選べるオプションは数え切れない。

ナチュラルな味わいを持ったPHEV

サーキットで296 GTBの実力を解き放つと、凄まじい加速力に襲われる。8500rpmへ到達させるまでもない。830psの最高出力は8000rpmで発揮される。パドルを弾くと、8速デュアルクラッチATは、まさに電光石火で次のギアを選ぶ。

バイワイヤーのブレーキも、感触は終始一定している。制動力は紛れもなく強い。

フェラーリ296 GTB(欧州仕様)
フェラーリ296 GTB(欧州仕様)

296 GTBを何より輝かせているのが、ハンドリングのバランス。ターンイン時の反応に息を呑み、その感触が大きな自信を引き出す。際立って扱いやすい。

リアタイヤは、296 GTBを大きく支えてくれている。前後左右のピッチやロールといった余計な動きを抑え込みつつ、オフスロットルできっかけを与えると、穏やかに流れ始める。

即座にパワーオンすれば、秀でたバランスを活かし、アクセルペダルの加減でテールの向きを自在に調整できる。余裕すら感じる。

従来のミドシップV8フェラーリのように、ナチュラルな味わいを持った最新の296 GTB。流麗なボディの内側には、830psを振り絞る、複雑なハイブリッド・システムを秘めている。

ミドシップのフェラーリとして、素晴らしいことに違いはなかった。冒頭のラファエル・デ・シモーネ氏への投げかけは、愚問だったかもしれない。むしろ、複雑なPHEVを見事なスーパーカーへ仕上げる、その秘訣を聞くべきだった。

フェラーリ296 GTB(欧州仕様)のスペック

英国価格:24万1550ポンド(約3744万円)
全長:4565mm
全幅:1958mm
全高:1187mm
最高速度:330km/h
0-97km/h加速:2.9秒
燃費:15.6km/L(予想)
CO2排出量:150g/km(予想)
乾燥重量:1470kg
パワートレイン:V型6気筒2996ccツイン・ターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
バッテリー:7.45kWh
最高出力:830ps/8000rpm(システム総合)
最大トルク:−
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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