自転車だけじゃなかった ビアンキ40HP 1907年生まれのイタリアン 後編

公開 : 2022.03.27 07:06

身体がむき出しの、120km/hでのスピード感

「ビアンキは、1週間に1600kmは問題なく走れます。悪い路面での安定性を高めるため、ハートフォード社製のダンパーを組みました。長距離を快適に走れることは、とても重要です」

「ほぼ身体はむき出しなので、120km/hでのスピード感はすごい。ゴーグルは不可欠です。長時間風に当たるのは疲れるんですよ」。とピーターが笑う。

 ビアンキ40HP(1907年/英国仕様)
ビアンキ40HP(1907年/英国仕様)

「遠征も楽しいですが、走り慣れた道を夏の夜に走る体験は、何にも勝ります。シートの位置が高く、前方視界は良好。ヘッドライトの明るさは充分ですが、リアにはLEDのテールライトをぶら下げています。他のクルマが気付けるように」

「アルプス峠越えも素晴らしい体験でしょうが、急な下り坂が得意ではありません。変速とハンドブレーキの扱いには、集中力が求められます」

いつかイタリアまで走り、トレヴィーリオのビアンキ本社を訪ねたいとピーターは話す。ブランドの歴史も、多くの人へ知ってもらえるだろう。

「2018年に、ロンドン中心部のクリスタル・パレスで開かれたイベントのために、ビール樽をリアにくくって、ロンドンまで高速道路を走りました。われわれが住むコッツウォルズから、何台かのクルマを追い越しながらね」

「子どもを乗せた1台が興味を持ち、ビアンキを追いかけてきたことがありました。休憩でピザを食べてクルマへ戻ると、沢山の人が集まり、交代に座ってスマートフォンで撮影していた時もありました」

大きなゴーカートのように走るビアンキ

2021年10月には、グッドウッド・サーキットで開催されたクラシックカー・イベント、SFエッジ・トロフィーにも招かれた。その時は、ルーク1人で自走したという。

「午前8時に出発し、お昼にはサーキットに着きました。参加車両で、レースに出られる20世紀初頭のクルマはビアンキのみ。ヘッドライトを外しただけで参戦しました」

 ビアンキ40HP(1907年/英国仕様)
ビアンキ40HP(1907年/英国仕様)

天気にも恵まれ、ルークのベストタイムは2分39秒。16位だったそうだ。「あの時ほど、カウンターステアを当てたことはなかったです。とても速かった」。ルークが笑う。

「楽しいイベントでした。40HPは、大きなゴーカートのように走ります。思い切りコーナーへ飛び込ませて、ドリフトで抜けられます。ステアリングの反応は正確ですし、ギアボックスも感触は良い。ベントレー3リッターより、良いと思います」

「130km/hを超えると、風圧で身体が後ろに押し倒されそうになります。ですが、ビアンキは安定して路面を掴むんですよ」

英国でも、実際にレースイベントを走るクラシックカーは減りつつある。ビンテージ・スポーツカークラブのイベントですら、出走するオーナーは限られる。

フロントブレーキすらない115年前のオープンホイール・マシンで、意欲的にイベントへ参加するロバーツ親子の走りが、良い影響を与えることに期待したい。これからも長く、積極的に走らせて欲しいものだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ミック・ウォルシュ

    Mick Walsh

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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