欧州カー・オブ・ザ・イヤー歴代受賞車 一挙紹介 前編 無名の迷車・珍車も数多し

公開 : 2022.03.19 06:05  更新 : 2022.03.19 07:05

1975年:シトロエンCX

空気抵抗係数のフランス語表記であるCXにちなんで名付けられたこの大型セダンは、1976年にプジョーに買収される前の「本物のシトロエン」最後のモデルでもあり、「大きなシトロエン」の最後でもあると多くの人に言われている。

抵抗係数わずか0.36と空力性能に優れたCXは、流麗なデザイン、改良されたハイドロニューマチック・サスペンションによる快適な乗り心地、当時のシトロエンが得意とした革新的なインテリアで勝利を収めた。

1975年:シトロエンCX
1975年:シトロエンCX

その奇抜なデザインとビロードのような乗り心地で欧州で人気を博したが、ドイツのライバルとの競争により、期待されたほどの売れ行きには届かなかった。しかし、17年間の生産で約120万台が販売されている。

1976年:シムカ1307-1308

はじめはクライスラー、その後PSAから販売された1307は、英国でデザインされ、フランスで生産された。そんな複雑な成り立ちを持つクルマだが、前輪駆動ハッチバックの先駆けとして気概のある小型車だった。

COTYの審査員は、そのデザインや実用性、高度な装備品を高く評価し、やや古いエンジンについては見過ごすことにしたようだ。

1976年:シムカ1307-1308
1976年:シムカ1307-1308

英国ではクライスラー・アルパインとして知られるシムカ(写真)は、その生涯を通じて10種類ものネームプレートを付けられ、さまざまなバッジエンジニアリング(OEM)が行われた。1986年に生産を終了し、シトロエンBXやプジョー405などPSAのラインアップに取って代わられた。

1977年:ローバー3500

3500 SD1は、フェラーリ365GTB/4デイトナなどにインスパイアされたデザインの大型ハッチバックである。比較的上級のP6の後継車であるSD1は、生産コスト削減のため、P6の複雑なリアサスペンションを廃止し、ライブリアアクスルに変更した。そのため乗り心地は悪く、リアブレーキもドラム式となっている。

しかし、ルックスや路上追従性、V8エンジンが評価され、COTYのタイトルを獲得した。アウディ100やフォードフィエスタを抑えての受賞である。

1977年:ローバー3500
1977年:ローバー3500

ブリティッシュ・レイランドの下で生まれた3500は、品質の低さと信頼性に悩まされたものの、英国警察に愛用されるなど、10年間で30万台が販売されている。1987年にホンダとの共同生産によるローバー800が登場し、3500は引退した。

1978年:ポルシェ928

911の後継車として開発された928は、V8エンジン、優れた動力性能、驚くほどリーズナブルな価格設定で審査員から歓迎された。ポルシェにとって最初で最後のCOTY受賞となっている。

928は結局911に取って代わることはなく、1995年に廃止されるまで共存し続けた。約6万1000台が生産されている。

1978年:ポルシェ928
1978年:ポルシェ928

928は美しいボディワーク、ブレーキ、最高出力350psの改良エンジンを搭載した928 GTSで有終の美を飾るが、それに見合うだけの値札が付けられた。常に人気の高い911の陰に隠れていた928だが、近年は再評価され、現存個体の価値も高まっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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