欧州カー・オブ・ザ・イヤー歴代受賞車 一挙紹介 後編 無名の迷車・珍車も数多し

公開 : 2022.03.19 06:06  更新 : 2022.03.19 07:06

2004年:フィアット・パンダ

当初採用される予定だった「ジンゴ」という名称は、ルノーが競合車である「トゥインゴ」に似すぎていると口を挟んだため、「パンダ」となった。1980年の初代パンダとは中身もデザインも似ても似つかない2代目パンダは、欧州COTYの審査員たちに安くて明るい印象を与え、5代目フォルクスワーゲン・ゴルフという長年の強敵をかわしたのだ。

軽快で、多彩なガソリンエンジンとマルチジェット・ディーゼルを搭載したパンダは、その小さな車体のパッケージングも高く評価された。

2004年:フィアット・パンダ
2004年:フィアット・パンダ

多才なパンダはイタリアとポーランドの警察で使用される(イタリア軍ではクロス4×4)など、世界中にファンを持っていた。そのため、フィアットは中国の自動車メーカーである長城に、ペリーのデザインがパンダとほぼ同じであるとして提訴することに成功。その結果、ペリーは欧州で販売禁止となった。

2005年:トヨタプリウス

プリウスが誕生した年であり、ハイブリッドパワーを大衆に知らしめた年でもある。ハイブリッド車の先駆者として、「ハイブリッド・シナジー・ドライブ」と呼ばれる複雑なパワートレイン開発とデザインの努力が実を結び、抜群の燃費を実現。シトロエンC4と2代目フォード・フォーカスに150点以上の差をつけて受賞したのである。

アトキンソンサイクルのハイブリッドシステムは、CO2排出量の削減を目指し、現在では多くのメーカーが採用している。ライバルがディーゼルの袋小路に消えていった時代にハイブリッドを取り入れたトヨタは、歴史に残る存在となった。

2005年:トヨタ・プリウス
2005年:トヨタ・プリウス

2006年:ルノー・クリオ

欧州COTY史上初めて複数回の受賞を果たしたクリオは、1991年の初代モデルのレシピを踏襲している。2006年のモデルもライバルよりわずかに大きく、審査員からはこのカテゴリーの新しいベンチマークを作ったと評価され、その品質、安全性、快適性、広さが称賛された。

5代目が2019年に発売されたクリオは、今でも欧州で最も人気のある小型ハッチバックの1つとなっている。

2006年:ルノー・クリオ
2006年:ルノー・クリオ

2007年:フォードSマックス

このユニークでスポーティかつ広々とした7人乗りのミニバンは、ルックス、家族向けの実用性、動力性能が評価され、オペル/ヴォグゾールコルサにわずか2点差で勝利した。

フォードの新型Sマックスは、この年の審査員58人中57人の支持を得ている。オプションの18インチホイールによる乗り心地の悪さが指摘されたものの、運転するのが楽しいミニバンであると認められた。これは、4代目モンデオの骨格をベースに作られたことが一因となっている。

2007年:フォードSマックス
2007年:フォードSマックス

日本でもマツダから販売される計画だったが、この時期、フォードとマツダは距離を置くようになったため、実現には至らなかった。マツダMPVと競合することも嫌ったのかもしれない。

とはいえ、初代Sマックスは欧州販売が順調だったため、2015年まで後継が作らなかった。2代目は現在も販売されているが、ミニバン市場が縮小しているため、3代目までバトンを引き継ぐのは難しいかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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