【詳細データテスト】アルピーヌA110 標準車+αのパワーと足回り より高速向き 高まった満足度

公開 : 2022.03.19 20:25  更新 : 2022.03.27 16:43

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

アルピーヌA110は登場から2年間、メカニズムにほとんど変化のない時期が続いた。大きく変わったのは2019年終盤だ。このとき、強化版のSグレードが追加された。また、英国ではエントリーグレードのピュアが17インチホイールを履き、その車両重量が1100kgを切った。

基本構造はモノコックで、96%がアルミ素材。ボディパネルやダブルウィッシュボーンサスペンションの部材もアルミだ。エンジンはルノー日産の軽量なM5R型1798cc直4ターボで、メガーヌR.S.用のチューニング違いとなる。搭載位置はリアミドシップで、クランクシャフトは横向き。トランスミッションは7速DCTで、オープンデフを介して後輪を駆動する。

外観上、これが限定車だとわかるポイントのひとつが、ペールゴールドのロゴやエンブレムだ。もっとも、それでわかるのはかなりこのクルマに詳しい人間くらいだろう。
外観上、これが限定車だとわかるポイントのひとつが、ペールゴールドのロゴやエンブレムだ。もっとも、それでわかるのはかなりこのクルマに詳しい人間くらいだろう。    JON BRADSHAW

価格は6万ポンド(約930万円)を超えるが、それを正当化する装備はどのようなものか。まずは、ややラグジュアリーさを増したインテリアが挙げられる。次に、限定車用のシリアルナンバー付きプレート、そして、もっとも重要なのが増強されたパワーとパフォーマンスだ。

同じくマイナーチェンジ前の中間グレードである、2021年型レジャンドであれば、レジャンドGTのツーリング性能や便利さを担保する装備はほとんどが手に入る。6ウェイ電動調整式コンフォートシート、駐車センサー、バックカメラ、フォーカル製軽量オーディオ、アルミペダル、さらによりリッチなレザー内装が標準装備だ。

オプションでは、320mmディスクと4ポットキャリパーのブレンボ製ブレーキシステムや、レジャンドGTとSに備わるアクティブスポーツエキゾースト、レジャンドGTの標準色であるアビスブルーのボディ塗装を追加できる。すべて追加しても5万6000ポンド(約868万円)を切る。

ホイールはどちらも18インチで、タイヤサイズも同じだ。しかし、レジャンドGTには2トーン仕上げの専用ホイールが用意される。そしてSと同仕様のエンジンも、オプション選択はできない。標準仕様よりパワフルなばかりではなく、より高い回転数まで回り、トルクバンドが広くなっている。

ホイール以外にも、外観には限定車だけのデザインがいくつか見られる。通常はシルバーの車名ロゴなどがペールゴールドで彩られ、ブレーキキャリパーはゴールド、テールライトはクリアタイプを採用した。室内では、アンバー色のレザーと、ディナミカスウェードのヘッドライニングが標準装備される。

とはいえ、違いはそれだけ、ともいえる。5500ポンド(約85万円)の価格差に対する見返りとしては、エンジンがアップグレードしているぶんを差し引いても物足りない。テスト車はマットカラーのマーキュリーシルバーで塗装されているが、これは2000ポンド(約31万円)のオプションで、内装色はアンバーではなくブラックとの組み合わせになる。

シートヒーターが必要なら、さらに420ポンド(約6.5万円)上乗せしなくてはならない。高級ツアラーとしてのA110を求めるなら、装備の充実度で満点をつけることはできない。もっとも、そのおかげで軽量さが保たれているともいえるのだが。

テスト車はオプション満載だが、それでも実測値が1150kgを切る。2018年5月に計測した最初期モデルのA110と比べても、15kgの増加にとどまっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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