DOHCの小粋なオープン フィアット1500S カブリオレ x アルファ・ロメオ・ジュリア・スパイダー 後編
公開 : 2022.04.03 07:06
当時の4気筒としては秀逸な洗練性と個性
冷えた英国の冬にエンジンを始動するには、どちらもアクセルペダルを数回踏んで、ポンピングする必要がある。始動すると威勢よくひと吠えするが、すぐに静かに落ち着いて、安定したアイドリングに移る。
市街地の移動を低回転域でこなせる粘り強さに加えて、高回転域で活発になりドライバーを楽しませてくれる洗練性と個性は、当時の4気筒エンジンとしては秀逸。技術力の高さを証明している。
ソフトトップを閉めると、2台ともに感心するほど車内は静か。風切り音は小さく、サスペンションは適度に硬いが、粗野にボディが振動することもない。
ボディロールは、ジュリア・スパイダーの方が大きい。それでも、60年前のクルマだということを考えれば、扱いやすくモダンな印象を受ける。
パワーでは20psほど勝り、MTは1段多い。どんな状況にも対応できるギア比と、滑らかにスライドできるシフトレバーが相まって、より自然に速いスピードで運転できる。
一方、1500S カブリオレに載るオスカ・エンジンは、サウンドがより甘美。シフトフィールでは敵わないが、ノイズは控え目で、すべての段にシンクロメッシュが備わり変速しやすい。
ボディシェルは、フィアットよりアルファ・ロメオの方が剛性感が高い。ステアリングホイールには不要なキックバックも伝わらず、正確に反応する。
陽気で穏やかなリビエラの空気感
コーナーでの安定感は、1500S カブリオレの方が上。四輪ともにコイルスプリングのアルファ・ロメオとは異なり、リアがリーフスプリングだという事実を感じさせない。扱いやすく、すぐに全力を発揮できる。
細身のタイヤは、簡単にドリフトを始める。ステアリングは切り始め付近で曖昧で、レシオも低い。ロック・トゥ・ロックは3回転だ。
見た目では、ジュリア・スパイダーがドライバーを誘惑する。盾の形のフロントグリルに、緩やかにカーブを描くテール。オーバーハングも短く、1500S カブリオレよりバランスが良い。ボディラインも、より艷やかで優雅だ。
フィアットのスタイリングにも、遊び心は感じられる。だが、2台を並べるとフォーマルな雰囲気も漂う。
ロジカルに比較すると、ジュリア・スパイダー・ヴェローチェの方が有利ではある。それでも、筆者には1500S カブリオレも捨てがたい。見慣れないフィアット・オスカというだけで、惹かれてしまう。
スタイリングやシャシー、全体の仕上がりは、アルファ・ロメオには及ばないかもしれない。それでも、陽気で穏やかな、リビエラの空気感を漂わせているからだろう。
協力:クラシック・モーター・ハブ