フォード・フォーカス・プロトタイプ
公開 : 2014.06.16 23:40 更新 : 2017.05.29 18:54
もともとマイナーチェンジは文字通り細かい改良のことを指す。しかしながら最近のフェイスリフトはもはやフェイスリフトとは呼べないほど大掛かりものが多い。ヴォグゾールVXR8の場合、辛うじて改良前のモデルと同じクルマだとわかる程度であり、最新のフェラーリ・カリフォルニアTに至っては以前のカリフォルニアと共通のシャシーを持ちながらも事実上の新型といえるものである。
そして今回ご紹介するフォード・フォーカスもマイナーチェンジによって大きく変更がされたモデルということになる。
インテリアの質感や室内の静かさでこのクラスをリードし結果的な評価が高いのは間違いなくフォルクスワーゲン・ゴルフであるが、依然としてわわわれのフォード・フォーカスに対する運転が楽しいクルマであるという評価は変わらない。
フォードは今回、動力性能向上のための開発をベルギーにて行っている。
まず根本的にインテリアに手が加えられた。向かって正面に位置するハンドルのデザインが新しくなったことによって新鮮さが加わり、ナビ画面もタッチ・スクリーンが大型化され、コクピットのような印象を与える。
更に室内の素材は大いに向上し、表面部分の多くが柔かさを併せ持つようになった。ヨーロッパ・フォードのビークル・エンジニアリング・マネージャーであるステファン・プレッサーに言わせれば、より車内が静かになるに従って、品質も向上し、ひいては市場拡大に繋がるのだという。
フォルクスワーゲン・ゴルフによって開拓されたこの市場は、現在フォードが掘り広げている。シートの質感は相変わらず良好で十分なスペースも併せ持つ。
エンジンに関して言えば、ダウン・サイジングは現在の王道である。現行の1.6ℓガソリン、1.6ℓディーゼルモデルに変わり、同じ排気量の1.5ℓでガソリン、ディーゼルの両方がラインナップされることとなった。エコブーストと呼ばれるターボ化されたガソリン・エンジンで最高184psを発生し、ディーゼルのTDCiでは最高123psを発生させる。効率的で尚且つ画期的なエンジンという表現はフォードの担当者アンドリュー・フレイサーの弁だ。
もしあなたがオートマチック車を欲しているのなら2.0ℓのディーゼルか1.6ℓのガソリンもラインナップされている。ヨーロッパで売れ筋のディーゼルにツイン・クラッチという組み合わせは2015年から導入予定であるが、ディーゼルやらツイン・クラッチなんて扱いにくいと言う人々のためにフォードは1.0ℓのエコ・ブーストモデルに6速トルクコンバーターのオートマティック・モデルも揃えている。こちらは、新技術の甲斐あって1kmあたりのCO2排出量は99gという数値をマークする。
ディーゼルのTDCi 2.0ℓエンジンは19%も燃費が向上し、今後フォードを含めた自動車メーカーは与えられたCO2削減の目標である2021年までに1kmあたり95gという数字に向かい最新技術と共に邁進していくとこととなるであろう。
動力性能に関して言えば、フォード・フォーカスはクラスで最も面白いクルマである。これらのクラスは非常に魅力的なクルマが多いことも事実であり、われわれは高い評価を与えたが、フォードに言わせれば改良を施したことで少し惜しい面が出たという。堅いゴムの弾性を利用し、ブッシュ・マウントを動かすためにサスペンションのフリクションを減らしたことで、サスペンションを搭載する部分とシャシーの強度を上げた結果路面への追従性がわずかに減少したそうだ。
つまりはハンドルを切った時にシャシーへの負荷が一時的に増大し、僅かながら柔軟性を欠く。フォード自身はもっと路面からのフィードバックを伝えるように改良すべきだとしている。
軽量のフォード・フォーカスはステアリング特性も良好でハンドリングの安定性も向上したと言っている。つまりは様々述べた動力性能に関しても心配は御無用と言ったところだ。
もう一つ付け加えておかなければならないのは、動力性能の開発担当者ノーバート・ケシングが語っている通り、ターン・インの際に少し挙動の遅れが発生しているということだ。中速コーナーに入る際、フロントを入れてもリアの挙動がセットしにくいテール・ハッピーな傾向も依然秘めているとのことである。
これらはフォードのエンジニアがサーキットのコーナーでデモンストレーションを行った際のことである。
どちらにせよこれらに評決を下すのは時期尚早である。フォード・フォーカスの仕上がりを首を長くして9月まで待つとしよう。全てはそれからである。
(マット・プライヤー)