クルマの中枢神経、ワイヤーハーネスが足りない… ウクライナ侵攻で自動車生産に新たな影
公開 : 2022.03.20 06:35 更新 : 2022.04.05 01:55
ロシア軍のウクライナ侵攻で、自動車用ワイヤーハーネスの供給が不透明に。何が起こり、どんな対策が進んでいるのでしょう?
半導体だけじゃなかった悩みの種
ウクライナで緊迫の情勢が続くなか、半導体不足を抱える自動車産業に追い打ちをかける新たな問題が生じている。
米ウェルズ・ファーゴ銀行の調査によれば、ウクライナには17ものワイヤーハーネス工場が存在しており、自動車用ケーブルメーカーの独レオニや、日本の住友電気工業、フジクラがワイヤーハーネスの生産拠点を開設している。
これらの工場が、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて、稼働停止・閉鎖に追い込まれているのだ。
AUTOCARでは現在、こうしたワイヤーハーネスの供給不安を追いかけているところだ。
自動車用ワイヤーハーネスとは、人間でいう血管・中枢神経系のような働きを持つ電線の束。
クルマへの搭載が増えている電装パーツ、センサー、演算装置に電源を供給しつつ、信号のやり取りを行う。
ワイヤーハーネス特有の事情とは
ワイヤーハーネス自体はそれほどハイテクというわけではないが、ラインオフした納車待ちのクルマに後付けすることはできない。
また、製造の工程が「どうしたって手作業に頼ることになる(部品メーカー関係者)」ために、人件費の安い国で生産する傾向にあり、代替調達は困難。
アジアの自動車メーカーなら中国・東南アジア、アメリカの自動車メーカーならメキシコ、欧州の自動車メーカーならウクライナといった東欧からの供給に片寄る。
そして今週、ドイツの自動車メーカーは、恒例の会計年度報告の日を迎えた。
各社の資料には「ウクライナでの戦争が事業に及ぼす具体的な影響は、まだ明確に予測することはできません(アウディ)」という注釈が添えられていた。
今後の展望は?
独ポルシェは、18日に行った年度報告のなかでウクライナ情勢に触れ、「ポルシェ工場のサプライチェーンに影響が出ており、計画通りの生産ができない可能性がある」と発表。
また、独フォルクスワーゲンのヘルベルト・ディースCEOは、「欧州向けワイヤーハーネスのキャパシティ拡大に加え、完成車の製造を北米・中国などの地域へシフトすることに取組んでいる」と明かした。
さらにBMWグループは、部品の供給不足により停止していた工場の稼働を再開する予定だが、ロシア軍のウクライナ侵攻によって供給不安が続くとの見解を示している。
メルセデス・ベンツも同様に減産を強いられるだろう。
ウクライナ情勢はワイヤーハーネス以外でも、半導体の製造に用いるネオンガス、リチウムイオン電池に必要なニッケル鉱石の調達などに影を落とし始めた。
サプライチェーンのこうした不透明感を受けて、前述のウェルズ・ファーゴ銀行は、今年上半期のヨーロッパにおける自動車生産は15%も減少する恐れがあると見込んでいる。
ワイヤーハーネスの供給問題については、最新情報が入り次第、続報をお届けしたい。