ロシアのウクライナ侵攻 多大な影響受けるドイツ車は? 日本市場にも波紋広がる
公開 : 2022.03.21 12:50 更新 : 2022.03.25 18:48
50を超える日本企業が拠点を置く
ウクライナには多くの日本企業がある。
帝国データバンクによるとウクライナに拠点を置く日本企業は57もあり、そのうち圧倒的に多い6000人もの従業員を擁するのがワイヤーハーネスを製造する住友電工(住友電装)である。日本企業の2番目はフジクラ、3番目は矢崎総業。
いずれも自動車用ワイヤーハーネスを製造するメーカーだ。
ちなみに日本の自動車メーカーはいずれもウクライナでの自動車生産をおこなっていないが、日産/トヨタ/スバルの3社がウクライナで事業をおこなっている。
ワイヤーハーネスのメーカーとしてウクライナ国内に工場を置く企業は他にアプティブ/レオニ/ネクサンスなど。
なおワイヤーハーネスの世界シェアトップ(2020年)である住友電工はウクライナの他に、ハンガリーとポーランドにも事業所を構えている。
これらの工場のほとんどはウクライナの西側に集中しており首都キエフからは離れている。
しかし3月10日以降は西部の拠点であるリヴィウ市への攻撃が激化しており、18日には飛行場に隣接する航空機整備場が数発のミサイルで攻撃された。
なお、リヴィウといえば日本のワイヤーハーネスメーカー「フジクラ」の拠点「Fujikura Automotive Ukraine Lviv, LLC」に近い。
フジクラも住友電工もすでに3月上旬から事業所を閉鎖している。
すでにウクライナ以外の国々で生産をおこなうべく拠点の移動を始めているところもある。
欧州では「一強」と言われるワイヤーハーネスメーカー大手「レオニ社」は(本社:ドイツ)ウクライナ国内の2か所(ストルイとコロミア)で事業を展開しているが3月7日よりワイヤーハーネスや電子部品の生産を停止している。
しかし、工場の移転は複雑で非常なコストがかかる。
多くのワイヤーハーネスメーカーはこれらの費用を各社単独で負担することは困難だ。
ロシアの軍事侵攻という理由だけに、工場での生産中止は不可抗力であるとし、費用を自動車メーカーに転嫁したい考えだ。
影響を受ける自動車メーカー/車種は
ウクライナのワイヤーハーネス工場が操業を停止していることで影響を受ける自動車メーカーは、ポルシェ/メルセデス・ベンツ/フォルクスワーゲンなどドイツの完成車メーカーが中心。
ワイヤーハーネスや電子部品を作るウクライナの工場の多くが、他のヨーロッパ諸国にあるドイツ系自動車メーカーの完成車工場に近い場所に位置しているからである。
ポルシェ
SNSの情報からポルシェについては以下の車種が3月には生産を一時停止することがわかった。
・マカン
・パナメーラ
・タイカン
・カイエン
・718ケイマン/ボクスター
・911GT3/911GT3ツーリング
・他すべての911モデル
また、他のドイツメーカーの動きでわかっているのは現在のところ以下。
メルセデス・ベンツ
ハンガリー・ケチケメート工場で3月末までの予定で夜間シフトを休止し生産調整をおこなう。
PHVは「CLA 250 eクーペ」と「CLA 250 eシューティングブレーク」の2モデルで、ハンガリーでのPHV生産は同工場のみとなるため、影響を受けそうだ。
フォルクスワーゲン
ワイヤーハーネスの生産力を強化し、完成車の生産を欧州から中国や米州に移管。
5〜10万台の生産を南米と米国の工場に移管しており、より多くの半導体を中国に配分している
海外メディアによると、ロシアのウクライナ侵攻が部品の納入に打撃を与えた後、今週ドイツの2つのEV工場での生産を停止する予定だという。
アウディ
海外メディアによると、ドイツのインゴルシュタットにあるアウディの本工場でのA4およびA5モデルの生産は、3月7日から11日まで停止される。
ネッカーズルムでは、A6およびA7モデルの生産が3月7日から18日まで一時停止された。
BMW
ワイヤーハーネスの生産が停滞していることから3月末までオーストリアにあるグラーツ工場(Z4と5シリーズを生産)の生産を休止する。
とくに影響を受けるのはZ4で生産が大きく遅れる見込み。