マクラーレンGTで車中泊 1日中楽しめるスーパーカーで24時間を過ごす 前編
公開 : 2022.03.26 09:45
アクセルペダルを踏み込む恐怖感は少ない
路肩には、まだ凍結防止剤の塊が転がっていた。最近まで氷点下近かった証拠だ。
マクラーレンGTが履いているのは、サマータイヤ。路面温度は7度前後。アクセルペダルの操作には注意が必要だが、深く踏み込むことに恐怖感は少ない。
四輪駆動のベントレー・コンチネンタルGTなら、もっとリラックスして運転できるだろう。とはいえ扱い方を一度学べば、そこまで恐れる必要はない。
グレートブリテン島の中央、ピークディストリクト国立公園の山並みを登る。徐々に天候が悪化する。壮大な景色は霧に包まれて望めない。英国では2番目に標高の高い場所にあったパブ、キャット&フィドル・インも霧の中だ。
オープンは1813年。しかし、2015年に一度閉店してしまった。現在は蒸留所が買い取り、ウイスキーの売店になっている。
店に入ったエドレストンは、驚くほど居心地が良いと電話で教えてくれた。ノンアルコールのドリンクを飲みつつ、窓越しにマクラーレンGTを眺めながら。
天候悪化を避けるように、早々に西のノースウェールズ地方を目指す。ピークディストリクト国立公園を経由した理由は、エキサイティングな道をどれほど巧みに処理できるのか確かめたかったから。ポルシェ911も得意とするワインディングだ。
交通量は多いものの、60km/hから90km/hの間でマクラーレンGTをじっくり味わう。この程度のスピードでも、走りは充分にスリリング。とても充足度が高い。
80km/hでもマクラーレンGTは生き返る
油圧パワーステアリングは、マクラーレンGTの大切な要素。ライバルの多くは、経済性や効率性を求めて、電動パワーステアリングへ切り替えている。しかし同社は質感を保つため、従来のシステムを堅持している。素晴らしい。
カーブの続くA537号線で、ピークディストリクト国立公園を下る。霧は深く、80km/hで走ることも危うい。それでも運転が楽しい。マクラーレンGTを生き返らせるのに、300km/hなど必要ない。
途中、何本かのトンネルを通過する。サイドウインドウを下げて、2000rpm以上の回転域を試さずにはいられない。フェラーリのような沁みるファルセットではないものの、疲れ気味の筆者の心を目覚めさせるのに、不足ない美声がこだまする。
午後6時に、グレートブリテン島の西、スランディドノという海岸線の町へ着いた。エドレストンは、プレミア・インというホテルへチェックインする。彼がダブルベッドへ包まれる前に、もう少し撮影が必要だ。
エドレストンは、エンジンルームの上のパーセルシェルフで寝れるのでは?と話す。ガラスリッドが覆っているから、星空も眺められるだろう。
荷室部分の長さを図ると、確かに収まりそうだ。しかし、フロントシートの間からパーセルシェルフの上へ体を押しこむことが難しい。なんとかグラスリッドの下で横になれたが、夜を過ごすのに現実的な場所ではないようだ。
この続きは後編にて。