マクラーレンGTで車中泊 1日中楽しめるスーパーカーで24時間を過ごす 後編
公開 : 2022.03.26 09:46
マクラーレンGTは、本当に普段使いできるスーパーカーなのか? 英国編集部は24時間を過ごし、能力を確かめることに。
マクラーレンGTで車中泊に挑戦
マクラーレンGTで24時間を過ごす旅。ホテルでの夕食は午後8時から。ステーキにエールパイという、定番メニューだそうだ。
フォトグラファーのマックス・エドレストンが、マクラーレンGTまで親切に食事を運んでくれる。シートはレザーだから、ステーキの肉汁が数滴垂れても拭けば大丈夫。
熱々のエールパイは曲者。やけどに注意しなければ。扱いに手を焼く筆者を横目に、彼はホテルへ戻っていく。スランディドノまでやって来て、優しく電灯が灯るレストランを外から眺めるだけとは・・。
夕食を済ませ、気持ちを切り替えて少し原稿を書く。助手席が今夜のベッドだ。駐車場へ大型トラックが入ってくる。流石に夜は冷える。
午後10時に就寝。思いのほか簡単に眠りについたものの、すぐに目が覚める。時計は見たくなかったが、午前2時だった。不思議なことに、マクラーレンGTの車内は思ったほど寒くない。
もっと凍える夜を想像して、かなりの装備を持ってきた。寝袋の上にウールの毛布を掛けている。意外にも心地良いが、頭も痛い。車内のCO2濃度が高いのだろう。そこからしばらく、深い眠りにはつけなかった。
午前7時。エドレストンが朝食を運んできてくれた。マクラーレンGTのドアを開く。車内の空気を吸わないように、彼が顔をそむけるのがわかる。
ベーコン・サンドイッチと、牛乳抜きのシリアルを飲み込んで、スランディドノを出発。南へ遠回りして、スノードニア国立公園を巡る。A5号線が伸びている。
設定変更で突然スポーツカーに変身
ノースウェールズ地方だから、丘陵地帯の放牧地で羊が草をはむ。サイクリストやランナーが、湿った路肩を走る。勾配が徐々にきつくなり、マクラーレンGTの能力を開放できるようになる。少しだけ。
歩行者も交通量も少ない。舗装路が谷間に沿って蛇行している。カーブの手前で減速し、思い切り加速しても、周囲に迷惑はかからない。
マクラーレンGTのドライブトレインとサスペンションを、1番ハードな設定に変える。さっきまでグランドツアラーだったが、突如スポーツカーに変身する。エグゾーストノートはアグレッシブになり、アフターファイヤーの破裂音が交じる。
7速デュアルクラッチ・オートマティックは、変速がクイックになる。タイトコーナーが近づきブレーキペダルを蹴る。シフトダウンするたびに、マフラーから咆哮が放たれる。
エンジンサウンドは、大きく変化しない。しかし、混じりけのない純粋な音色に聞き惚れてしまう。
コーナーへのターンインは、特に輝く部分。グランドツアラーでは想像しにくい勢いで、フロントタイヤがイン側へ食らいつく。20時間以上車内で過ごしていても、鮮明なフィードバックでドライバーをリフレッシュさせてくれる。
ワインディングを駆け上がり、スノードン山の展望台が近づく。午前11を過ぎ、ストレッチしても足と腰が痛い。山頂へ迫ると雲が開け、太陽が姿を表した。
普段より近い陽光が眩しい。何年も様々なクルマを試乗してきたが、片田舎の駐車場へ到着して、ここまで興奮したのは初めてだ。