ドリフトのやり方 初心者が見よう見まねで挑戦した結果…… 意外と難しい?

公開 : 2022.03.27 06:05

上達には忍耐が不可欠 身体も慣れてくる

ビルはとても辛抱強い人だった。クルマに身を任せることの大切さを優しく教えてくれ、忍耐力が必要であることを強調した。実際、各ステップの間に一瞬の間を置いて、クルマの動きを感じ取り、バランスを調整することは、ステップそのものと同じくらい重要なことなのだ。

練習を重ねるうちに、最初のステップには慣れてきたので、次はドリフトをうまく掴むことに挑戦してみる。アクセルの踏み込みと踏み直しの間が重要なのだが、何度か失敗しているうちにタイミングが合ってきて、なんとかコーナー出口まで走りきることができた。ステアリングとスロットルの入力バランスなど、まだまだ考えなければならないことは多いのだが、この最終ステップは割と直感的に操作できるように感じる。

インストラクターのビルは、ドリフトを甘く見た初心者である筆者に対しても、辛抱強く指導してくれた。
インストラクターのビルは、ドリフトを甘く見た初心者である筆者に対しても、辛抱強く指導してくれた。

一休みしてから350Zに乗り込み、いくつかのドリフトをつなぎ合わせてみた。すぐに、扱いやすいクルマになったと感じた。ホイールベースが長くなったことで、回転の動きが読みやすくなり、ドリフトを開始し、掴み、維持するという流れが自然にできるようになった。

ドリフトはスポーツであり、アートである

あとは、ドリフトを何回かつなげるだけ。このあたりからドリフトが「アート」になってくるのだが、このときばかりは通常のレーシングラインを走ろうという気持ちを抑えなければならない。コースの端に寄れば寄るほど、次のドリフトをするためのスペースが広くなる。

ここでもタイミングと忍耐が重要なポイントになる。ドリフトの終わりから次の始まりまでできるだけ長い時間パワーを維持し、リフトアップさせる。クルマが振り子のように揺れ、それを受け止めて次のドリフトに移る。

一度コツを掴めば、あとは練習の積み重ねと自分の創造力次第。
一度コツを掴めば、あとは練習の積み重ねと自分の創造力次第。

この日のセッションが終わるまでには、ほぼ1周することができるようになった。「ほぼ」ね。最初の数時間でここまでこれたのは、ビルの完璧な指導と、聖人のような忍耐力のたまものだ。とはいえ、プロのようにシームレスなドリフトができるようになるには、だいたい4年くらいのしっかりした練習が必要だと彼は言う。

でも、一度そこまで成長すれば、あとは自分のイマジネーション次第でどうにでもなるという。自分の限界に挑戦し、創造性を発揮することを恐れないドライバーは、見ていてとてもエキサイティングだ。アーティストと同じように。

ドラテクを磨くならプロに学ぼう

英AUTOCAR編集部のカメラマン、ルック・レイシーは2011年にドリフト・リミッツ・モータースポーツ・アカデミーの設立に携わった。当初は、彼と創設者のジョニー・バーデン、2代目MX-5、そしてセメントを混ぜるのに使う一輪車だけがそこにあった。特に、かつて英国空軍の爆撃機基地だったボービングドン飛行場の誘導路にできた穴を、セメントを使って何時間もかけて手作業で埋めたことを、レイシーは今でも覚えている。

レイシーはもう関与していないが、ドリフト・リミッツは、比較的手頃な価格でドライビング体験を提供することに努め、年々大きく成長している。現在ではドリフトスクールに加え、マクラーレン12C GT3などのホモロゲーション車両やスタント・ドライビングコースを体験することができる。

今回は英国のスクールを紹介したが、日本国内にもさまざまなドライビングスクールがある。自分の腕を磨きたいなら、自己流ではなくプロの指導を仰ごう。
今回は英国のスクールを紹介したが、日本国内にもさまざまなドライビングスクールがある。自分の腕を磨きたいなら、自己流ではなくプロの指導を仰ごう。

また、「ポリス・パシュート」という面白そうな企画もある。プロの運転するダッジ・チャージャーのパトカーから、ポルシェボクスターで逃げるなんて、楽しくないわけがない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・デイビス

    Simon Davis

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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