忘れがたきレイランドの傑作 ローバーSD1シリーズ 3500からV8-Sまで 後編
公開 : 2022.04.09 07:06
ローバーの新時代を象徴するサルーンとして誕生したSD1。カー・オブ・ザ・イヤーにも輝いた傑作を、英国編集部がご紹介します。
もくじ
ーモダンな雰囲気に3500へ近いインテリア
ーフラッグシップとなる最上級のローバー
ー1040台のみが作られた最高のSD1
ー現在に再評価を受けるSD1の個性と存在感
ーローバーSD1シリーズ 4グレードのスペック
モダンな雰囲気に3500へ近いインテリア
カリビアン・ブルーのローバー2300を大切にする、クリス・パウエル氏。とても運転が楽しいと話す。
「エンジンは滑らかで粘り強く、パワーは充分。ギア比の設定も良いと思います。でも、オプションだったパワーステアリングがなく、駐車時は重くて大変ですが」
パウエルは、ローバーが想定した市場へ、2300は合致するように作られていたと考えている。しかし後期型のシリーズ2では改良を受け、シリーズ1ほど質素な内容ではなくなった。
それでも、より快適な走りを求める人のために、1つ上のローバー2600という選択肢も用意されていた。ランチア・ガンマ・ベルリーナやプジョー604 Tiと並んで、有能なサルーンの一角をなしていた。
新車当時、シリーズ1の2600の英国価格は5800ポンド。BMW 520iより手頃で、188km/hの最高速度を誇り、パイルカーペットが敷かれたゴージャスな車内が特長。マップライトなども備わり、2300より格上の内容が与えられていた。
ジョン・ハーパー氏がオーナーの2600は、1978年式。アボカド・グリーンに塗られた個体としては、現存する唯一だと考えられている。鮮やかなボディ色は、彼がこのクルマを選んだ動機にもなったらしい。
2600の車内は、2300より3500へだいぶ近い。モダンな雰囲気に、新車時のオーナーも満足できただろう。ウッドパネルのないダッシュボードは、ミニマリストを意識したデザインとして、SD1に共通していた。ステアリングホイールのパッドも個性的だ。
フラッグシップとなる最上級のローバー
ハーパーがこの2600のオーナーになったのは、14年前。しかし、新車時からファンだったと明かす。追加されているオプションは、パワーステアリングのみ。これまでに一度も、大々的なサビの修復や再塗装は行われていない。
「1970年代後半になると、クルマ好きは2600がスポーツセダンだと気付き始めました。軽量な2597ccの6気筒エンジンと、マニュアルの組み合わせを好んだんです。少数派というモデルの立ち位置は、わたしが好きな点でもあります」
そしてミダス・ゴールドのもう1台、弁護士や会社の取締役にピッタリなSD1シリーズが、V8-Sだ。1979年7月2日、ローバーは「最高とそれ以外との違い」を表現した上級モデルとして、このグレードを投入した。
SD1のフラッグシップとして良く効くエアコンを備え、北米市場への復帰を探る仕様でもあった。英国では、ヴォグゾール・ロイヤル(オペル・セネター)のオーナーを、振り向かせる狙いもあった。
「ユニークなスタイルと豪華な走行フィーリングとを完璧に融合させた、最上級のローバーを生み出しました」。と、新車時のパンフレットでは誇らしげに主張されていた。
毛足の長いパイルカーペットが敷かれ、ヘッドライト・ワイパーとスライディング・ルーフが自慢。メッシュのアルミホイールを履き、フロントノーズには、エナメル塗装されたカラフルなエンブレムがあしらわれた。