かつてないスピードとサウンド ポルシェ718ケイマン GT4 RSへ試乗 部分的に下剋上 前編

公開 : 2022.03.25 08:25  更新 : 2022.08.08 07:13

独特の吸気音を生み出すインダクション

もちろん、単純に載せ替えただけではない。リアからミドへ搭載位置を変更するには、エンジンの向きもリアアクスルを中心に180度回転させる必要がある。それに伴い、エグゾーストやドライサンプ・システムも、設計し直されている。

エグゾースト・システムは、911 GT3より長くなる。テールエンドまでの途中には、避けるべきドライブシャフトが存在し、排圧は自ずと高くなる。最高出力が510psから500psへ、最大トルクが47.8kg-mから45.8kg-mへ、僅かに低くなった理由だという。

ポルシェ718ケイマン GT4 RS(欧州仕様)
ポルシェ718ケイマン GT4 RS(欧州仕様)

「なかには、このクルマのポジションを保つうえで、意図的にエンジンをデチューンしたと考える人もいるでしょう」。と話すのは、ポルシェのGT部門を率いるアンドレアス・プレウニンガー氏。さらに、こう続ける。

「しかし、それは事実ではありません。これは(911)GT3用エンジンそのもので、9000rpmまで回転します。ミドシップ・レイアウトに合わせてパッケージングされただけ。差を付けていないと、信じて欲しいですね」

この4.0Lフラット6は、通常のケイマンとは異なる場所から空気を吸う。ドライバーの後頭部付近に吸気口が設けられた、新開発のコールド・エアインダクション・システムを介する。これまで、リアクォーター・ガラスが収まっていたところだ。

そこから導引された空気は乗員空間の後方、エンジンの上部に載る、カーボンファイバー製エアボックスを経由しシリンダーへ流れていく。このインダクション・システムが独特の吸気音を生み出し、素晴らしいエンジン音へ結びつけている。

陶酔するほど豊かなエンジンサウンド

激しく脈動する空気と、極めて鋭く咆哮するエンジン。まるで、トランペット状の吸気ポートが並んだ、キャブレターエンジンのサウンドのようにゾクゾクする。しかも、それ以上に陶酔させる豊かさがある。

車内で聞いている限り、2022年に公道走行が許されたことが信じられないほど。ポルシェのモータースポーツを取り仕切るフランク・ウォリサー氏も、こんな音響体験が得られるとは考えていなかったようだ。

ポルシェ718ケイマン GT4 RS(欧州仕様)
ポルシェ718ケイマン GT4 RS(欧州仕様)

そのため、718ケイマン GT4 RSのプロトタイプは、開発終盤まで社内の上層部には隠されていたらしい。このサウンドをトーンダウンするよう、指示されることを恐れて。

「エンジンノイズから刺々しさを抑えるべく、多くの手を施しています。システム全体をシャシーへしっかり固定し、インダクション部分には吸音性のあるフォーム素材を追加し、共振を抑えています」。とウォリサーが説明する。

「実は、本来このエンジンはかなり耳障りなノイズを放っていました。チェーンソーのようだ、と表現する人もいましたね。今でも少し残ってはいますが」

4.0Lフラット6のパワーを受け止めるのは、ショートレシオ化された7速PDK。991型911 GT3 RSが採用していたものと、基本的には同じユニットだ。さらに、通常のリミテッドスリップ・デフが待ち構えている。

サスペンションは、前後ともにストラット式。シャシー側とはボールジョイントで固定され、先代のサーキットマシンの911と、ハードウエア的には関係性が濃いという。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

かつてないスピードとサウンド ポルシェ718ケイマン GT4 RSへ試乗 部分的に下剋上の前後関係

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