この見た目でナンバー付き! プロドライブ・ハンターへ試乗 ダカール・マシンを公道で 後編

公開 : 2022.04.03 08:26

2022年のダカール・ラリーで総合2位を掴んだハンター。2億3000万円超のオフローダーを、ロンドンで走らせました。

6速シーケンシャルMTと500Lタンク

プロドライブ・ハンターのエンジンは、車両中央付近へ隠れるように搭載されている。点火プラグの交換は、ダッシュボードを取り外した方が早いという。補機ベルトを交換するには、プロのメカニックでも2時間位は必要らしい。

それ以上の作業の場合、シャシーを持ち上げてエンジンを降ろした方が手っ取り早いとか。だが、この3.5L V6ツインターボは基本的に堅牢。普段は、あまり手を掛けずに済むのだろう。

プロドライブ・ハンター・公道仕様プロトタイプ
プロドライブ・ハンター・公道仕様プロトタイプ

トランスミッションは、シフトパドル付きのサデブ社製6速シーケンシャルMT。ワークス体制のバーレーン・レイド・エクストリーム(BRX)・ハンターT1+では、FIA規定に則りパドルを装備できず、大きなシフトレバーが伸びていた。

もちろん四輪駆動で、駆動力割合は50:50。フロントとリア、ミドのデフは、それぞれ個別にロックでき、走破性を高めている。

ダカール・ラリーのステージは距離が長く、沢山の燃料を必要とする。乗員空間の後方に、500Lのタンクが鎮座している。スペアタイヤを積む空間もある。荷室として使えなくはないが、試乗した日にもスペアタイヤが載っていた。

定員は2名。ラリーカーとして、必要な人数でもある。

ガルウイングのドアは、ガスストラットが支えるから開閉しやすい。ドアの開口部は、サイド排気のエグゾーストを避けるように、三角形だ。

アリエル・ノマドや一般的なレーシングカーとは異なり、ロールケージのバーが邪魔せず、乗り降りはさほど難しくない。シートへ身体を軽く投げ込む感じで大丈夫。

車内は賑やかで視界が悪く運転は難しい

試乗車のシートは固定式だったが、スライド式も指定もできる。ドライビングポジションは良好。ワークスマシンと異なり、インテリアは少しドライバーへ優しい仕立てになっている。

パッド部分にボタンが並んだ、丸いステアリングホイールの直径は丁度いい。3枚のペダルが、レーシーな雰囲気を高める。機械的につながっているのはブレーキのみ。アクセルとクラッチは電気信号を送るバイワイヤだが、フィーリングは至って自然だ。

プロドライブ・ハンター・公道仕様プロトタイプ
プロドライブ・ハンター・公道仕様プロトタイプ

ブレーキは前後ともに、6ポッド・キャリパーとベンチレーテッド・ディスクという組み合わせ。ABSはない。車重は1850kgだという。

ECUにはエンスト防止のソフトウェアが組まれている。トルクも太く、特にアクセルペダルをあおることなくスムーズに発進できた。

運転は難しい。何より前方以外の視界が悪い。車内は相当に賑やか。音源の中心はエンジンだが、ストレートカットのギアからもノイズが響いてくる。耳栓は不可欠だ。

リミテッドスリップ・デフはロックしたがり、すぐにゴリゴリと振動が生じる。エンジンは吹け上がりが尖すぎ、扱いにくい。フィルムラッピングされたランボルギーニアヴェンタドールより、市街地には向いていない。

セバスチャン・ローブ氏が駆った赤いハンターとは違い、今回のクルマは地味な砂色。それでも沢山の人が振り返る。これこそ真のクーペSUVだ。BMW X6など、まだ甘い。

スタイリングは優雅とはいえない。存在感は誰よりも強い。筆者なら、ピックアップトラックにすると思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 撮影

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

この見た目でナンバー付き! プロドライブ・ハンターへ試乗 ダカール・マシンを公道での前後関係

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