遂に日産アリア・プロトタイプへ試乗 402kmの航続距離は妥当 価格はお高め?

公開 : 2022.03.27 08:25

ラウンジのように印象の良い車内と走り

カーペットの質感は今ひとつながら、インテリアに用いられている素材はトップクラス。従来の日産とは別次元の、高級感が生まれている。

ウッドパネルはフェイクだというが、充分鑑賞に耐える。パネルに内蔵されたタッチセンサー・タイプのボタンも、フィードバックがあっていい。一部の機能には、実際に押せるハードボタンが残されても良かったとは思うけれど。

日産アリア 63kWh アドバンス・プロトタイプ
日産アリア 63kWh アドバンス・プロトタイプ

フロント側に荷室はないものの、リアシート後方の荷室は広い。車内空間全体も、ID.4よりゆとりがあるようだ。

日産は、アリアをラウンジのようなクルマだと表現している。確かに、インテリアにはそんな雰囲気が漂う。それは、走行フィーリングにも反映していると感じた。スポーティさを求め乗り心地を多少犠牲にした、ライバルの純EVとは違うベクトルを向いている。

試乗が許されたのは、路面が滑らかなサーキットということで、しっかり質感を確認することはできなかった。しかし、コーナー内側の縁石へ乗り上げてみた限り、衝撃吸収性に優れるサスペンションが与えられている様子。

それでいて姿勢制御に優れ、上下動は少ない。ヒョンデアイオニック5より好印象といえる。路面状態の良くない英国の一般道にも、より適しているかもしれない。

高い完成度を期待できるが、価格は高めか?

一方で、ドライバーが楽しめるようなシャープさはない。218psを一手に引き受けるフロントタイヤは、滑りやすい路面ではフルスロットルでホイールスピンしかけるし、トルクステアも感取される。

コーナーでは明確にボディロールを示す。ロードホールディング性も、クロスオーバーとしては妥当といったところだ。

日産アリア 63kWh アドバンス・プロトタイプ
日産アリア 63kWh アドバンス・プロトタイプ

とはいえ、日常的な速度で走らせている限り自然で扱いやすい。ステアリングのレシオや、ステアリングホイールの重み付けは丁度いい。完全なワンペダル・ドライブはできないものの、強力な減速も得られる回生ブレーキは、効きを調整しやすいと感じた。

日産アリアは、すでに欧州市場でもオーダーが始まっている。英国とノルウェー、オランダ(ネザーランド)からスタートしており、2022年夏の納車が予定されている。

英国価格は、63kWhの駆動用バッテリーに前輪駆動で4万1845ポンド(約648万円)、87kWhなら5万1090ポンド(約791万円)から。高性能なパフォーマンス・グレードでは、5万8440ポンド(約905万円)となっている。

具体的な評価は、量産版を公道で試乗するまで保留としておこう。特徴的で完成度の高いクロスオーバーに仕上がることは、間違いなさそうだ。競合モデルと比較して、価格は少々お高めに感じるのだが、いかがだろう。

日産アリア 63kWh アドバンス・プロトタイプのスペック

英国価格:4万1845ポンド(約648万円)
全長:4595mm
全幅:1850mm
全高:1655mm
最高速度:160km/h
0-100km/h加速:7.5秒
航続距離:402km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:1920kg
パワートレイン:AC誘導同期モーター
バッテリー:63kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:218ps
最大トルク:30.6kg-m
ギアボックス:シングルスピード

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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