ベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブル試乗 ハレとケ 彩る唯一無二の世界観

公開 : 2022.03.31 05:45  更新 : 2022.04.01 12:02

ベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブル試乗。洗練された基盤の中に共存するハレとケが唯一無二の世界観を提供します。

青空を仰ぐか、静寂を楽しむか

久しぶりに、ベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブルをドライブした。

全長4850mmの堂々たるボディ。ソフトトップを閉めている姿は2トーンにペイントされた瀟洒(しょうしゃ)なクーペを装っている。

ベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブル
ベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブル    宮越孝政

サルーンの流れをくむオープンモデル、いわゆるf.h.c(フィックスドヘッドクーペ)は、「ここぞ!」というときしか幌を降ろすべきではない、と力説していたのは徳大寺有恒巨匠だ。

当時はベントリィ(巨匠は必ずそう記していた)のオーナーたる者は慎み深さを持つべき、ということだと解釈していた。

だが後年、実際に古いベントレーに触れ、電動開閉とはいえ幌の最終的な固定に人力を必要とするソフトトップの開閉を経験したことで少し考えが変わった。

都市部の喧騒を抜け、景色が開けたからと言って、すぐに幌を開け放ちたいなどという思いにはなかなか至らないであろうということだ。

もちろん現代のコンチネンタルGTのソフトトップは別物だ。

全自動だし、50km/h以下なら走行中でも開閉でき、費やす時間も20秒弱という早業である。

今回もとりあえず幌を降ろして走りはじめることにした。

思ったよりも寒ければ、もしくは渋滞がひどければ、スイッチを長押しするだけで静寂に包まれる。これこそ21世紀ベントレーの愉悦である。

極上の機構に思いを馳せ

今回試乗したコンチネンタルGTコンバーチブルはW12エンジンを搭載していた。

だがMY2022のコンチネンタルGTでW12を搭載するのは「スピード」のみとなる。

ベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブル
ベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブル    宮越孝政

今日び12気筒という響きが少し感傷的なのは、内燃機関の終わりがいよいよはっきりとしてきたことと無関係ではないだろう。

クランクシャフトが2回転する間に12回の爆発が起こる12気筒は、内燃機関の1つの究極といえる。

こうして生まれた軸出力がギアボックスやデフを経て四輪を駆動する。

もちろん現代のそれは、走行状況やドライバーの気持ちを読み取る電制により生き物のように可変し、シャシーの側ともシームレスに連携してみせ複雑な機構を覚らせない。

時間に急かされていなければ、ベントレーで都心の渋滞にはまっても退屈はしない。

ごく低速でもW12エンジンの滑らかさは味わえるし、落ち着いてインテリアを観察することもできる。

ナビと3連メーターがドラム式に切り替わるローリングディスプレイなどは、実は単純な回転運動ではないので、メカニカル好きの想像を大いに掻き立ててくれる。

ようやく首都高速の入り口に辿り着いたので、ドライビングモードをコンフォートからベントレー推奨のBモードに変え、幌を下ろすことにした。

シートヒーターを効かせても寒さが消えるわけではない。

だがこんな蛮勇も、コンバーチブルだからこそ出会うことができる選択の余地なのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    宮越孝政

    Takamasa Miyakoshi

    1973年生まれ。スタジオワークを中心としたカメラマンのアシスタントを数年経験後、自動車雑誌の編集部員として、見習いに。編集部員時代に鍛えられた事は長距離の自走での移動と早朝ロケで早起きすること。その後、独立し、フリーランスとなる。クルマと関わりを持っていられることに幸せを感じる。愛車はルノー・カングー、日産スカイラインGT-R(R32)

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