当時最高の空力性能 ヴォグゾール(オペル)・カリブラ 英国版クラシック・ガイド 前編
公開 : 2022.04.10 07:05
欧州のツーリングカー・レースで大暴れした、カリブラ。価値あるモダン・クラシックを、英国編集部が改めてご紹介します。
空気抵抗の小さいボディに活発なエンジン
カリブラは、単なるベクトラの2ドアクーペ版ではない。巧みな技術力と優れたデザインが施された、今でもドライバーを高揚させてくれる特別なモデルだ。
新車当時、その滑らかなボディは量産車として最も空力特性に優れていた。空気抵抗を示すCd値は、グレードによって異なるものの、最小で0.26。10年間もその地位を譲ることはなかった。
魅力的なスタイリングを生み出したのは、デザイナーのウェイン・チェリー氏とエアハルト・シュネル氏という2人。高回転域を好んだ直列4気筒16バルブか、トルクフルな直列4気筒8バルブのエンジンが、見た目にそぐわない走りを与えていた。
4速ATも選べたが、5速や6速のMTは滑らかな変速感が魅力。今でも、パッケージングの魅力は薄れていないと思う。
フロントマスクの特徴といえるのが、薄いヘッドライト。高さは70mmほどしかなく、優れた空気抵抗に一役買っていたものの、夜間の明るさは平均以下だった。
カリブラのベースとなったのは、GM社製の大きな2900フロアパン。シボレー・キャバリエなども採用するもので、その結果、このクラスでは最もゆとりのある車内空間が備わっていた。
装備も充実しており、パワーステアリングにABS、集中ドアロック、パワーウィンドウ、電動ミラー、サンルーフなどが標準。しかし、当初はエアコンをオプションでも選べなかった。グラスエリアの広い車内は、真夏にはサウナ状態だったとか。
ドライバーを満たすモダン・クラシック
1990年、16バルブ・モデルで四輪駆動が選択できるようになり、トラクション不足と不快なトルクステアを解決。さらに6速MTのターボも追加され、当時のホットハッチを蹴散らす加速力を身に着けた。
モデル末期に登場したのが、4カムのV型6気筒エンジン。トラクション・コントロールが実装され、増加したパワーへ対応した。
英国ではヴォグゾール・ブランドからの販売で、複数のグレードが展開された。インテリアがアップグレードされ、専用アルミホイールを履く1991年のティックフォード、カリビック・ブルーのボディに専用のアルミと内装が与えられた、1992年のSEなど。
ほかにも、チェッカー柄クロスかアルカンターラの内装に、スポーツ・サスペンション、専用アルミが奢られたDTMは1995年に登場。ブラックのボディにBBSアルミ、スポーツ・サス、レザーシート、エアコンが装備されたターボLE 8は1996年に発売された。
ターボエンジンに四輪駆動の組み合わせでも、刺激が足りないと当時の自動車評論家は印象をまとめている。基本的な能力は高いものの、過大なアンダーステアが評価を伸ばせなかった原因だった。
直列4気筒ターボは足まわりが硬すぎ、V型6気筒では柔らか過ぎたたことも、やや鈍重な動的能力の改善にはつながらなかった。それでも日常的に運転している限り、不足なくパワフルに走った。
現代でも通用する装備を持ち、流麗なスタイリングは今でも良く映える。モダン・クラシックとして、ドライバーを満たしてくれるクーペだ。