当時最高の空力性能 ヴォグゾール(オペル)・カリブラ 英国版クラシック・ガイド 前編

公開 : 2022.04.10 07:05

欧州のツーリングカー・レースで大暴れした、カリブラ。価値あるモダン・クラシックを、英国編集部が改めてご紹介します。

空気抵抗の小さいボディに活発なエンジン

カリブラは、単なるベクトラの2ドアクーペ版ではない。巧みな技術力と優れたデザインが施された、今でもドライバーを高揚させてくれる特別なモデルだ。

新車当時、その滑らかなボディは量産車として最も空力特性に優れていた。空気抵抗を示すCd値は、グレードによって異なるものの、最小で0.26。10年間もその地位を譲ることはなかった。

ヴォグゾール(オペル)・カリブラ(1990〜1998年/英国仕様)
ヴォグゾールオペル)・カリブラ(1990〜1998年/英国仕様)

魅力的なスタイリングを生み出したのは、デザイナーのウェイン・チェリー氏とエアハルト・シュネル氏という2人。高回転域を好んだ直列4気筒16バルブか、トルクフルな直列4気筒8バルブのエンジンが、見た目にそぐわない走りを与えていた。

4速ATも選べたが、5速や6速のMTは滑らかな変速感が魅力。今でも、パッケージングの魅力は薄れていないと思う。

フロントマスクの特徴といえるのが、薄いヘッドライト。高さは70mmほどしかなく、優れた空気抵抗に一役買っていたものの、夜間の明るさは平均以下だった。

カリブラのベースとなったのは、GM社製の大きな2900フロアパン。シボレー・キャバリエなども採用するもので、その結果、このクラスでは最もゆとりのある車内空間が備わっていた。

装備も充実しており、パワーステアリングにABS、集中ドアロック、パワーウィンドウ、電動ミラー、サンルーフなどが標準。しかし、当初はエアコンをオプションでも選べなかった。グラスエリアの広い車内は、真夏にはサウナ状態だったとか。

ドライバーを満たすモダン・クラシック

1990年、16バルブ・モデルで四輪駆動が選択できるようになり、トラクション不足と不快なトルクステアを解決。さらに6速MTのターボも追加され、当時のホットハッチを蹴散らす加速力を身に着けた。

モデル末期に登場したのが、4カムのV型6気筒エンジン。トラクション・コントロールが実装され、増加したパワーへ対応した。

ヴォグゾール(オペル)・カリブラ(1990〜1998年/英国仕様)
ヴォグゾール(オペル)・カリブラ(1990〜1998年/英国仕様)

英国ではヴォグゾール・ブランドからの販売で、複数のグレードが展開された。インテリアがアップグレードされ、専用アルミホイールを履く1991年のティックフォード、カリビック・ブルーのボディに専用のアルミと内装が与えられた、1992年のSEなど。

ほかにも、チェッカー柄クロスかアルカンターラの内装に、スポーツ・サスペンション、専用アルミが奢られたDTMは1995年に登場。ブラックのボディにBBSアルミ、スポーツ・サス、レザーシート、エアコンが装備されたターボLE 8は1996年に発売された。

ターボエンジンに四輪駆動の組み合わせでも、刺激が足りないと当時の自動車評論家は印象をまとめている。基本的な能力は高いものの、過大なアンダーステアが評価を伸ばせなかった原因だった。

直列4気筒ターボは足まわりが硬すぎ、V型6気筒では柔らか過ぎたたことも、やや鈍重な動的能力の改善にはつながらなかった。それでも日常的に運転している限り、不足なくパワフルに走った。

現代でも通用する装備を持ち、流麗なスタイリングは今でも良く映える。モダン・クラシックとして、ドライバーを満たしてくれるクーペだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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