スーパーカー屈指の完成度 アウディR8 V10 RWDパフォーマンス NA V10の魅力

公開 : 2022.04.07 08:25

滑らかな乗り心地に崇高な内燃エンジン

それが故に、複雑さが増す高性能モデルのなかにあって、RWDパフォーマンスは運転も理解もしやすい。ステアリングホイールの重み付けは完璧といえ、反応はとても正確。ウェット・コンディションでは、フロントタイヤが若干心もとないけれど。

運転席からの視界が良く、ボディサイズも大きすぎない。競合モデルより、コンパクトでもある。

アウディR8 V10 RWDパフォーマンス(英国仕様)
アウディR8 V10 RWDパフォーマンス(英国仕様)

しなやかなサスペンションは、舗装がところどころ剥がれた英国南西部、コッツウォルズ地方の道とも相性が抜群。最もソフトなノーマル・モードを選んでも、乗り心地は硬めなものの、エッジの効いた衝撃は上手になだめてくれる。

大きめの入力も、一発でピタリと吸収してくれる。優れたボディ剛性と煮詰められた減衰力特性だからこそ、なせる技だ。

試乗車のインテリアは、ブラックでコーディネートされていた。スーパーカー基準でいえば、装飾的な華やかさは控え目。そのかわり、操作で悩むことのない直感的なレイアウトにまとまっている。

エアコンの操作パネルなど、スイッチ類はアウディ品質。見慣れたものでもある。2006年に登場した初代R8でも、アウディのオーナーならすぐに親しくなれるインテリアが目指されていた。それは、今でも変わらない。

そこへ、他とは一線を画す崇高な内燃エンジンが組み合わされている。純EVの時代が接近しているとしても、この輝きが霞むことはまったくない。

孤高の音響と質感を備えたNA V10

高回転域まで引っ張れば、素晴らしいパワーを発揮してくれる。さらに、自然吸気V型10気筒の最大の魅力といえるのが、孤高の音響と質感。V型8気筒エンジン以上に特別で、強い心象を生んでくれる。

洗練されクリーミーに回る、V型12気筒とも異なる。良い意味で。1.6L 4気筒エンジンと同じようにゆっくり走れる。それでいて、中回転域以上での本領は、急変したように凄まじい。

アウディR8 V10 RWDパフォーマンス(英国仕様)
アウディR8 V10 RWDパフォーマンス(英国仕様)

ガソリンをエネルギー源とする高性能な公道用モデルとして、屈指の完成度にある1台が、アウディR8 V10 RWDパフォーマンスだ。極めて訴求力の高い、今のわれわれに与えられた選択肢だといえる。

アウディR8 V10 RWDパフォーマンス(英国仕様)のスペック

英国価格:12万8510ポンド(約2056万円)
全長:4429mm
全幅:1940mm
全高:1236mm
最高速度:328km/h
0-97km/h加速:3.7秒
燃費:7.9km/L
CO2排出量:286g/km
乾燥重量:1665kg
パワートレイン:V型10気筒5208cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:570ps/7800rpm
最大トルク:56.0kg-m/6400rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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