新しい翼を手に入れた日産ブルーバード 英国工場35周年でEVに生まれ変わった「ニューバード」とは

公開 : 2022.03.30 06:05

日産サンダーランド工場のベテラン従業員

驚くべきことに、日産サンダーランド工場では、操業開始当初の従業員が現在も19人働いている。

筆者は、1987年に入社したピーター・ロビンソンと、1986年入社の生産ライン最年長のマイケル・ハーカー(55歳)、そして同僚のレス・グリーナー(56歳、1987年入社)、マイケル・アダムス(54歳、1988年入社)に会っている。

サンダーランド工場の操業開始当初から働いているベテラン従業員
サンダーランド工場の操業開始当初から働いているベテラン従業員    AUTOCAR

「わたし達は、この工場のDNAの一部なんです」とハーカーは誇らしげに言った。ハーカーの最初の仕事は、ブルーバードにナンバープレート・フィニッシャーを取り付けることで、アダムスは組み立てラインでスポット溶接をしていた。ロビンソンはトリム&シャシー部門で歯を食いしばり、グリーナーは車輪の取り付けという重要な仕事を担当した。

「ブルーバードはわたし達が最初につくったクルマだから、本当に愛着があるんです」とグリーナー。

アダムスによると、当時は今よりもっと仲間意識が強かったという。「今よりずっと緊密な共同作業が行われていました。ラジオを聴いて、全部の歌を口ずさんでいましたよ」

4人はニューバードの灰皿にくすくす笑いながらも、その明るく広々としたインテリアと豪華装備に感嘆の声を上げた。「ブルーバードを作るには、かなりの工数がかかる」とグリーナーは言う。「無駄がないのはいいことですね」

ピーター・ロビンソンとその同僚がブルーバードを製造していた当時、自分たちが生きている間に代替エネルギーが普及し、内燃機関が縮小する時代が来るとは思いもよらなかっただろう。

日産は昨年7月、サンダーランド工場を中心とした電動化ビジョン「EV36Zero」を発表し、旧来のやり方を変えるために10億ポンド(約1600億円)かけて大きな一歩を踏み出した。このプロジェクトは、EV、再生可能エネルギー、バッテリー生産を1か所に集めた世界初のEV製造エコシステムを構築するとしている。

一方、10億ポンドの予算のうち4億2300万ポンド(約680億円)をリーフの後継車の開発に充てている。最近公開された「チルアウト」コンセプトをベースにしたクロスオーバーで、今後数年のうちに発売される予定だ。サンダーランドの生産ラインの従業員は、これで忙しくなるはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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