テスラ・モデルY 詳細データテスト 強力な動力性能 走りの洗練性は問題外 充電設備の内容は圧倒的

公開 : 2022.04.02 20:25  更新 : 2022.04.02 21:35

内装 ★★★★★★★★☆☆

英国やドイツ、そして日本のプレミアムモデルなら、細部や装備のあらゆるところまで豪華にしたインテリアでユーザーに訴求するものだ。それを期待しているとしたら、モデルYはニーズに合わないかもしれない。

内装は、ほかのテスラ車と同じように、その論理的帰結ともいうべきミニマリズムに徹している。必要がないものはほぼ設置されていないが、その排除されたものの中には実体のあるボタンも含まれる。唯一とも言える例外は、ダッシュボードに走るナチュラルなルックスのウッドパネルだ。

内装はじつにシンプルで、操作系はほとんどが大型ディスプレイに統合されている。レザーのような動物性素材は使用されていないが、質感に不満は感じない。
内装はじつにシンプルで、操作系はほとんどが大型ディスプレイに統合されている。レザーのような動物性素材は使用されていないが、質感に不満は感じない。    MAX EDLESTON

テスラの製造クオリティは塗装の剥がれやすさなどが指摘され、あまり高く評価されてこなかったが、今回のテスト車にそれは当てはまらない。室内のすべては頑丈で、表面の感触はどこも気持ちいい。タッチパネルを別にすれば、指紋もつきにくい。

動物性素材は一切使われていない。流行のヴィーガンというやつだが、それを聞いて出来の悪いビニールシートの悪夢が蘇るという声も上がりそうだ。しかし、実際に触れてみると、本革との違いに気づかないのではないかと思える。標準仕様は黒い合成皮革だが、1100ポンド(約17万円)で白いシートへ変更もできる。

合成皮革と同じく、モデルYに乗るならタッチ式ディスプレイにも親しまなくてはならない。それ以外に、手で触れて操作する手段がほとんどないからだ。

実体コントロールの排除は、方向指示器レバーやドライブセレクターまで排した最新のモデルSほど際立ったものではない。それでも、あと残っているのはシート調整スイッチとハザードボタン、ウインドウスイッチ、そして驚くほど丸いステアリングホイールに設置された、ふたつの多機能コントロールデバイスだけだ。

操作系がこれほど少ないわりには、操作性は上々だ。その要因は、タッチ操作の反応が非常に早く、サブメニューの階層があまり深くないことだ。また、デバイスによっては多機能が割り振られ、それがうまく機能している。

たとえば、ワイパーのレバーが独立していない代わりに、ウインカーレバーにボタンとして統合されている。軽く押せば拭き取りのみ、強く押せばワイパーの作動とともにウォッシャー液が噴射される。どちらの場合も、速度調整はディスプレイにメニューが表示される。

それでも、やはり不満はある。ステアリングコラムやミラーの調整は、まずメニューを呼び出し、次にステアリングホイール上のスイッチで操作しなければならない。これは合理的ではない。

また、ディスプレイのエアコン用ボタンは小さすぎる。さらに、後席にシートヒーターは装備されるが、その操作は前席のタッチ式ディスプレイを介するほかないので、後席で直接コントロールできない。流行りのミニマリズムというより、これは純粋にコストカットのせいだろう。

いっぽうでインテリアの秀逸な点は、とにかく広いということだろう。それに関しては、どの競合モデルもかなわない。後席は、レッグルームもヘッドルームも広々としている。ところが、リアシートの座面はフロアに対して高めだ。ここは、より低いキアEV6のほうが快適に座れる。

荷室容量は、ルーフを高くしたことで稼いでいる数字だが、パーセルシェルフは用意されていない。それでも、われわれの計測した寸法はスコダ・エンヤックやキアEV6を全方位で上回り、フロア下の収納スペースも大きい。加えて、フロントにも電動オープンが可能な117Lの収納スペースが用意されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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