テスラ・モデルY 詳細データテスト 強力な動力性能 走りの洗練性は問題外 充電設備の内容は圧倒的

公開 : 2022.04.02 20:25  更新 : 2022.04.02 21:35

走り ★★★★★★★★★☆

テスラが、さまざまなスーパーカーをブッちぎるドラッグレースの映像を見たことがあるかもしれない。テスラは昔ながらの感覚でいうところのドライバーズカーではないかもしれないが、それでもパフォーマンスは強力だ。

今回のモデルYロングレンジも、ベースモデルでありながら合計で440psを発生する2基のモーターを積み、0−97km/h加速は4.7秒をマークする。さらに1万ポンド(約155万円)を足してパフォーマンス仕様を手に入れれば、490psで3.5秒を実現するが、ロングレンジでも物足りないと感じることはないだろう。

とにかくイージードライブで、特別な操作なしに強烈な加速もスムースなブレーキングも得られる。いっぽうで、ドライバーのスキルを見せつけたいドライバーに応えてくれるようなモードは備わっていない。
とにかくイージードライブで、特別な操作なしに強烈な加速もスムースなブレーキングも得られる。いっぽうで、ドライバーのスキルを見せつけたいドライバーに応えてくれるようなモードは備わっていない。    MAX EDLESTON

なにより、この動力性能が容易に発揮できるというのが魅力的だ。特別なモードを選んだり、テスラの初期の速いモデルにあったようなバッテリー暖機の必要性はない。ただペダルを踏み込めば、このファミリー向けSUVは地平線目掛けてカッ飛んでいく。その突進の猛烈さ以外にドラマティックなところはまったくない。

ドライ路面であれば、ひたすらグリップして直進していく。ほかの電動車には見られないくらい、速度の電子制御リミッターが作動する217km/hまで嬉々として速度を上げるのだ。

テスラがこのモデルをパフォーマンスと銘打って、もっとスローな後輪駆動モデルを設定したとしても、文句は出なかっただろう。手に余るようなら、チルモードを選んで、加速レスポンスを和らげて出力を絞り、バッテリー消費をセーブすることもできる。ただし、同じことは右足の踏み込みを調整すれば簡単にできる。

そんなモードを組み込むくらいなら、回生ブレーキの設定幅を数多く用意してくれたほうがよかった。モードはクリープ/ロール/ホールドの3つだが、走行中にスロットルペダルを戻した際の回生ブレーキはどれも同じくらい強い。

差が出るのは、低速走行時だ。クリープではATギアボックスのような挙動で、ロールではブレーキを踏んでいないと走り続け、ホールドは低速時の回生ブレーキを強めて1ペダル運転を可能にする。ショーファードリブンにも負けないくらいスムースにクルマを停止させる、ブレーキの効かせ方はじつにすばらしい。

そういう運転が気に入れば満足できるだろうが、スロットルオフでの介入が最小限で済み、より強いブレーキングのためにペダル操作をしたいと望むドライバーもいるだろう。しかし、そういう声に応えるモードはない。このことは、テスラが自社の車両をどのように運転・操作してほしいと想定しているかを物語っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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