時代の最高速モデル 1940年代 ジャガーXK120 ベルギーの高速道路で213.4km/h
公開 : 2022.04.17 07:05
直列6気筒エンジンの威勢のいい排気音
今回ご登場願ったジャガーXK120は、RACラリーへ参戦した有名なマシンをオマージュしている。1950年式で、オーナーによるとミッレ・ミリア出場に向けたセットアップだという。
助手席側のダッシュボードには、ブランツ社製のデジタル・ラリータイマーが載り、中央上部にはブレモント社製のアナログ時計が2枚取り付けられている。それ以外はノーマルのまま。助手席側の足元に、消火器が積まれている程度だ。
レザー張りのバケットシートは小ぶりで、体にピッタリとフィットする。ドアは小さく、ステアリングホイールは大きいから、身体はスリムで柔軟な方が良い。
ダッシュボードは、大きなレブカウンターとスピードメーターが占拠し、その隙間に油圧と水温、電流と燃料のメーターが並んでいる。飾り気はない。
ハンドブレーキ・レバーは、トランスミッション・トンネルの助手席側。クロームメッキで仕上げられ眩しい。短いシフトレバーが、腕に自然とフィットする。
ステアリングホイールは、4スポーク。ほぼ垂直に取り付けられ、半球形のボスが、胸元に迫っている。
ツインSUキャブレターに燃料が送られるのを待ってから、スターターボタンを押す。3442ccの直列6気筒エンジンが、待っていたかのように目覚める。2本出しのマフラーから、威勢のいい排気音が放たれる。
クルマが積極的に走りたいと訴えてくる
モス社製の4速MTには、間違ってリバースへ入らないようにするストッパーがない。1速を選ぶ時は、シフトレバーを左側へ倒しすぎないように気を使う。だが、運転自体は至ってシンプルだ。
ステアリングホイールもペダルも、重すぎず扱いやすい。反応は漸進的で、ドライバーへの要求は少ない。シフトレバーの動きは正確で、つなぎやすい。クイックな変速も受け付けてくれる。
ジャガーXK120は、積極的に走りたいと訴えてくる。感触豊かなステアリングホイールを切り込み、コーナーへ飛び込む。重心は低く、不安感はない。
ドライバーの座る位置は、リアタイヤ側に近い。雪に覆われたアルプス山脈のワインディングでも、リアタイヤの挙動が把握しやすく心強かったことだろう。クルマの動的能力を、直接的に理解できる。
お借りしたXJ120にはショートレシオのギアが組まれ、最高速度は160km/hを超えないという。それでも、70年前にベルギーの高速道路を疾走したドライバーの姿を、まじまじと思い浮かべることができた。
ステアリングホイールを握るサットンは、小さなフロントガラスに頭をかがめ、右足へ力を込めたのだろう。スピードメーターの針が駆け上がる様子を、視界の隅に入れながら。
協力:ジャガー・ランドローバー・クラシック
ジャガーXK120(1948〜1954年/英国仕様)のスペック
英国価格:1263ポンド(1948年時)/15万ポンド(約2400万円)以下(現在)
生産台数:7612台
最高速度:213.4km/h
0-97km/h加速:12.0秒
車両重量:1324kg
パワートレイン:直列6気筒3442cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:162ps/5200rpm
最大トルク:26.9kg-m/2500rpm
ギアボックス:4速マニュアル