概念を超越した速さ ブガッティ・シロン・スーパースポーツへ試乗 480km/h超の公道仕様 前編

公開 : 2022.04.06 08:25  更新 : 2022.04.12 13:43

ゴルフと同じくらい簡単に運転できる

ブガッティの技術者が成し遂げた偉業は、482km/hという速度だけではない。圧倒的な空気の壁が立ちはだかっているから、生半可なパワーでは打ち勝てない。だが、最先端の自動車工学をもってすれば、解決できなくはない。

それ以上に称賛すべき成果が、日常的に運転できるクルマとして仕上げられていることだ。これまでのヴェイロンや、ノーマルのシロンと同様に。

ブガッティ・シロン・スーパースポーツ(欧州仕様)
ブガッティ・シロン・スーパースポーツ(欧州仕様)

ブガッティを保有するフォルクスワーゲン・グループのハッチバック、ゴルフと同じくらい簡単に運転できる。むしろ、タッチモニターでダッシュボードが覆われた8代目より、実際に押せるハードボタンが残され、車載機能の操作は簡単なほど。

ウォレスと幾つか言葉を交わし、座る位置を交換するためシロン・スーパースポーツのドアを開く。今度は筆者が運転席に座る番だ。ボディを観察していると、通常のシロンとスタイリングで異なる部分を、説明してくれた。

1番わかりやすい違いは、250mm延長されたテール部分。マフラーも水平に並ぶのではなく、左右に2本づつ別れて、縦に並んでいる。そのおかげで、リア・デュフューザーの面積を広げ、上方に大きくえぐることが可能になったという。

ロングテール化とディフューザーのデザインにより、空力的に理想的な「ティアドロップ」と呼ばれる形状へ、より近づけられている。ボディ後方の気流を整え、効率を高めているだけでなく、空気抵抗を減らしつつダウンフォースを増やしている。

420km/hでのホイールの遠心力は3000G

ウォレスによれば、420km/hで走るシロンのホイールリムに掛かる力、遠心力は3000Gにも達するという。つまり、空気を入れるバルブキャップが2.5gだとしたら、7.5kgの重さになるということだ。44gの空気圧センサーは、132kgにもなる。

通常のタイヤバルブでは、これほどの力には耐えられず空気が漏れてしまう。シロン専用のモノが求められる。通常のクルマでは心配する必要のないことが、あらゆる部位で生じる。高額になっても当然だ。

ブガッティ・シロン・スーパースポーツ(欧州仕様)
ブガッティ・シロン・スーパースポーツ(欧州仕様)

しかし、身体にフィットするレザーシートに座ってみても、そんな技術的な努力は伝わってこない。ラグジュアリーな仕立てで、モーターが内蔵され、スムーズにスライドする。

ステアリングホイールは小径で、リムも細い。きれいな丸ではなく、底辺がフラットに削られている。チルトとテレスコピックの調整は手動だが、ストロークは長い。

7速デュアルクラッチATはリカルド社製。ダッシュボードから滑らかに続くセンターコンソールに、美しく削り出されたシフトノブが突き出ている。センターコンソールを飾るアルミニウム・トリムは、1枚ものだ。

ドアに用意されたエアコンの送風口は、黒く塗られたプラスティック製にも見えるが、実際はチタン製。ドアポケットなど、幾つかの小物入れも上品に作り込まれている。

フロントのボンネットを開くと、小さいものの荷室がある。グランドツアラーとして乗ることもできるだろう。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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