英米オフローダー比較 フォード・ブロンコ x ランドローバー・ディフェンダー 尊重したい独自性 後編

公開 : 2022.04.09 09:46

北米で愛されてきたブロンコが一新。英国オフローダーの代表、ディフェンダーとの個性の違いを、英国編集部が確かめました。

インテリアの質感ではディフェンダーが上

北米のオフローダー、新型フォードブロンコと、英国のオフローダー、新型ランドローバー・ディフェンダー。悪路の走破性を考えてみる。

ディフェンダーのリア・サスペンションは独立懸架式なため、トレッド間に大きなディファレンシャル・ギアがぶら下がっていない。ぬかるんだ路面など、高いわだちで駆動系を擦る可能性は低い。

ブラックのフォード・ブロンコ 2.3エコブーストと、ダークブルーのランドローバー・ディフェンダー 90 D250
ブラックのフォード・ブロンコ 2.3エコブーストと、ダークブルーのランドローバー・ディフェンダー 90 D250

一方、ブロンコはリジットアクスルだが、トレッドが狭く車重は300kg近く軽いため、同じく駆動系は擦りにくい。泥炭地では、ディフェンダーより沈み込む量も小さいはず。

同様に、クリアできる地形や速さは異なる。一方は得意でも、他方は不得意、あるいはその逆、ということもありえる。悪路走行が許されなかった今回は、比較することが難しい。

インテリアの雰囲気は、ディフェンダーの方が明らかに上。高級モデルとして、不満のない車内空間に仕立てられている。シートに座っている限り、能力に長けたオフローダーだとは感じさせない。

スイッチ類の形状は大きく、毛糸の手袋をしたままでの操作性が担保されている。ドアの内張りやセンターコンソールには、あえて見えるようにボルトが打たれている。それでいて、内装素材は高級だ。

フォード・ブロンコのインテリアは、本来の手頃な北米価格に準じている。人間工学的に、ドライビングポジションは良好で車載機能も操作しやすいが、素材の質は高くない。硬質なプラスティック製部品も多い。

印象的なエンジンの静寂性や乗り心地

試乗車がソフトトップだったということもあり、ブロンコは外界との隔離感も低調ではある。とはいえ、カリフォルニア西部の砂漠地帯を走るなら、ルーフを開いてドアも取っ払うのが良い。風切り音も、気にしなくなるだろう。

ソフトトップなら、ハードトップしか選べないディフェンダーとは違う気軽さで、大自然との距離を縮められる。ただし、英国の寒い冬の道を走るなら、ディフェンダーの快適さを選びたくなってしまう。

フォード・ブロンコ 2.3エコブースト・アウターバンクス(英国仕様)
フォード・ブロンコ 2.3エコブースト・アウターバンクス(英国仕様)

舗装路での違いもわかりやすい。エンジンの静寂性は、ガソリンターボのブロンコに対し、ディーゼルターボのディフェンダーが肉薄している。3.0L直列6気筒は、1250rpmから57.9kg-mの最大トルクを発揮するから、むやみに回転数を高める必要もない。

ディフェンダー 90の車重は2303kgもあるが、ノイズは遠くから聞こえ、エンジンの存在感は小さい。普通に運転している限り、至って静かだ。

さらに感心させられるのが、ゆったりとした乗り心地。路面の殆どの凹凸を、見事なまでに滑らかに均してくれる。この快適性だけでも、大きなSUVを購入したいと思わせるのに充分かもしれない。

オフロード能力は間違いない。同時に、モノコック構造を得たディフェンダーは、高速道路での長距離移動も素晴らしい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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